[原子力産業新聞] 2006年1月5日 第2313号 <1面>

[インタビュー]日本原子力研究開発機構 殿塚理事長に聞く

 昨年10月、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合し、「日本原子力研究開発機構」が誕生した。これまで両法人の培ってきた基礎・基盤研究とプロジェクト研究開発との連携・融合を図り、その成果の普及、国の政策への技術的支援等を通じて、わが国の原子力研究開発活動に寄与していくのが、新法人の使命。原子力機構が、初めての年明けを迎えるのを機に、殿塚猷一理事長より今後の取り組み姿勢について話を聞いた。(石川公一記者)

―新年に向けての抱負は

 世界の原子力研究開発の中核機関となるよう着実に前進していきたい。役職員には、5つの基本方針@安全確保の徹底A創造性あふれる研究開発B現場の重視C業務運営の効率化D社会からの信頼――を示しており、これに基づいて皆が力を発揮し、それぞれの分野で目標を達成して欲しい。私はすでに全事業所を訪れ、職員らに「志を高く」持ち、国民の負託、社会の要請に応える研究開発成果を生み出していくようお願いした。

―高速増殖炉サイクルの確立に向けた取り組みは

 FBRサイクルの実用化については、「実用化戦略調査研究」の中で実施しており、そのフェーズUの成果が本年度末にとりまとめられ、国の評価を受けることとなっている。「もんじゅ」は、「発電プラントとしての信頼性の実証」と「ナトリウム取り扱い技術の確立」という目的を達成するため、早期の運転再開を目指し、今改造工事が進められている。これに際しても、地域住民との対話を通じ、「もんじゅ」に対する理解を得るよう努めている。事故で旧動燃事業団の体質も問われたことから、安全確保、経営機能、情報公開、品質管理など、自己改革に取り組んできたことは我々の資産になったと思う。

―核融合、量子ビーム技術等、大型研究開発プロジェクトへの取り組みは

 まず、核融合開発については、JT―60をバージョンアップし、その活用を通じてITER計画に極内機関として貢献していく。また、量子ビーム利用では、大強度陽子加速器「J―PARC」の整備推進、加えて、高レベル放射性廃棄物の処分技術の研究開発では、幌延と瑞浪の施設造成工事を引き続き進めていくこと。これら3点と先のFBR開発とを合わせた4つが原子力機構の柱となる重点プロジェクトだ。

―産学官との連携強化など、新たな役割は

 大学との連携により研究開発の効率的推進、人材育成の充実に努めている。また、新たな取り組みとしては、核不拡散政策に関する支援、産業界との連携などがあり、これらについても各事業推進部門で適切に展開していく考えだ。

―効率的な業務運営を目指す上での課題は

 効率的に活動成果を上げていく仕組み作り、組織運営をどう行っていくか。中期目標期間で、現在約4400人の人員を年100人の割合で減らす必要があり、また、事業費は毎年度1%減となるが、これらについても職員らに理解を求めていく必要がある。基礎基盤研究とプロジェクト的研究開発の連携を密に取り合うことにより、二法人統合に伴う融合相乗効果が得られるものと期待している。今は、これから成果を出すための種をまいたところである。


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