[原子力産業新聞] 2006年1月5日 第2313号 <2面>

核燃料サイクル国際管理構想

 昨年9月末の国際原子力機関(IAEA)総会で、米国が廃棄核兵器からの高濃縮ウランを元に核燃料の供給保証を提言、すでに発表されていたIAEAの核燃料サイクル施設多国間管理構想(MNA)、いわゆる「エルバラダイ構想」との共通項が見え始めたことから、MNAは一気に現実味を帯びてきた。

 我が国でも経済産業省が10月末に開かれた原子力部会で、2010年頃に開発される新型遠心分離機を使った濃縮ウランの海外供給、公的資金を使った海外ウラン鉱山の共同開発、成型加工サービスの提供など対応策を打ち出した。しかし、MNAや供給保証構想を巡る世界的な動きに対して、官民を問わず我が国が関与できない状態が続き、日本はいわば「蚊帳の外」に置かれた状態。多国間管理構想は、我が国の核燃料サイクルにも大きな影響を与える可能性があるにも関わらず、日本の原子力関係者がほとんど関与できていないうえ、関心も薄いことは問題だ。また、現実に存在する高濃縮ウランを担保とし、早期の実施を目指す米国の核燃料供給保証構想と比べて、我が国の提案は、国際的に十分説得力を持つものなのか。MNAや供給保証構想を通じてどのような政策目標をどのように達成しようと考えるのか、積極的な国際貢献の在り方も含めて日本の検討すべき問題は多く、原子力委員会や原子力部会での徹底した議論と、素早い行動が必要だ。

 MNAなどの国際的な動きに対して、日本の原子力産業界の関心と動きが低調なことも懸念材料だ。カーター政権による米国内再処理中止政策によって、日本の東海再処理施設が運転停止に追い込まれたのは、原子力の歴史から言えば、ほんの昨日の事だ。核燃料サイクル施設の国際管理が国際的なコンセンサスとなれば、わが国の核燃料サイクル施設の運転にも影響しかねない。原子力産業界は「嵐が通り過ぎる」のを待つのではなく、米国と連携しつつプロアクティブに取り組むべきである。


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