[原子力産業新聞] 2006年1月26日 第2316号 <2面>

[原子力安全委員会] 原子力安全シンポ開催 リスク情報活用安全規制テーマに

 原子力安全委員会は24日、浜離宮朝日ホール(東京・中央区)で「原子力安全シンポジウム」を開催した(=写真)。

 今回は、同委員会の「リスク情報を活用した安全規制の導入に関するタスクフォース」が中間報告をとりまとめたことを受け、これまでの調査・審議状況、諸外国の動向について紹介し、今後の方向性を探ることがねらい。

 安全委員会では、リスク情報を活用した安全規制導入のあり方について、04年より調査審議を開始、このほどまとめられた中間報告をもとに、まず同タスクフォース座長の矢川元基東洋大学計算力学研究センター長が、欧米におけるリスク情報活用の現状、国内関係機関の取組・評価などを説明した。

 続いて、水町渉・原子力安全基盤機構特任参事が「諸外国におけるリスク情報規制」と題して講演。リスク情報に基づくNRCの規制改良により、原子力発電が史上最高レベルの発電量・稼働率を達成している米国の実例を紹介した。

 米国では、原子炉監督制度「ROP」とわかりやすい性能指標「パフォーマンス・インディケータ(PI)」の採用により、「成績の良いプラントは基本検査のみとし、悪いプラントは検査を増やす」という「アメとムチ」の考えにより、事業者にインセンティブを与えることが発電実績の好成績につながっているという。

 わが国事業者の視点から、田南達也・東京電力原子力技術・品質安全部マネージャーは、ECCSストレーナなど、主に設計部門におけるリスク情報活用実績のほか、運転中・停止中を通じたリスク監視・管理、保安活動といった今後活用が期待される分野での実施例をイメージした上で、@安全性A品質B説明性――の向上を目指し、事業者が自主的に実施できるところから先行的に「パイロット運用」していくなど、今後の取組姿勢を明らかにした。

 また、確率論的安全評価の基礎となる故障データの収集に向け、国内関係機関のデータベース整理、海外情報の参照等、質の向上に努める一方で、立地地域とのデリケートな関係から、リスクコミュニケーションに踏み込むことの難しさを事業者の立場から述べた。


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