[原子力産業新聞] 2006年2月2日 第2317号 <2面>

[原技協] 新方式ピアレビューの結果を公表 記者会見で指摘点など明らかに

 日本原子力技術協会は1月16日〜27日までの2週間、米原子力発電運転研究協会(INPO)や世界原子力発電事業者協会(WANO)の方式を取り入れたものとしては初めてとなるピアレビューを、東京電力・福島第一原子力発電所で行った。27日に現地で記者会見(=写真)を行い、主な指摘点を発表した。今回のレビューには、初めてINPOのレビューアー2名が「先生役」として参加、それぞれ、運転、保守分野の評価を行った。

 原技協の松下清彦理事(九州電力原子力最高顧問)を総括代表とする15名のレビューチームは、@組織・管理A運転B保守C技術支援D放射線防護E運転経験――の各分野について、プラントの巡視や作業の観察、発電所職員・協力会社社員とのインタビュー、書類との照合などを通じて評価。「世界の最高水準に近づくため」、長所と要改善事項について指摘を行った。

 行政官庁による検査は、書類審査により法律等の遵守状況をチェックすることが主眼であるのに対し、原技協のレビューは、レビューアー自身が原子力発電所で働いた経験があることを生かし、運転・保守等の現場実務について、発電所職員とも意見を戦わせながら世界のスタンダードと比較、「お互いに高めあう」ことが目的だ。

 一方、INPOやWANOのレビューではその結果を公表しないのが通例だが、原技協のレビューでは「世界で初めて」記者会見で結果を公表、報告書も公開する。

 今回のレビューの結果、組織・管理では長所として、@リーダーシップ開発研修を積極的に行い、コミュニケーション手法や改善手法を外部・海外から学び、発電所内での改善に生かしているA協力会社に情報を積極的に発信し、フィードバックの仕組みも構築、発電所で働く約5000人の間で情報を共有し、緊密なコミュニケーションを図っている――ことが評価された。一方、要改善事項としては、@協力会社に対する発電所の期待・基準が低い場合や明確に伝えられていないケースがあるA発電所のパフォーマンス向上のために、管理層はより高い基準・期待を設定し、それを各個人に徹底する必要があるB現場での作業安全への期待・基準が不十分、不徹底、指摘・是正されていないケースがある――などを指摘。

 運転について要改善事項として、@直交代時の引継中に他の用件で中断されるなど、一部の運転業務について改善活動強化が必要Aプラント内に手書きのメモや情報掲示等、管理されていない運転員補助表示が存在するBプラント内の整理整頓や機器の状況の改善が必要――などを指摘。

 保守については、@保守基準・期待のチェックや強化・徹底が必要なケースA燃料プール周辺とタービン管理区域で異物混入防止のため、消耗品等の管理強化が必要――などが指摘された。また、信頼性重視保全や状態監視保全を行うためのプログラムの展開が必要であり、この分野では米国より「10年遅れている」との指摘もなされた。

 松下総括代表は、発電所側からきわめて良好な協力を受け、発電所は勧告のうち、できるものはすぐ実行していると評価した。大出所長は、発電所員とのディスカッションを通じて評価が行われたことから、改善勧告に所員が「納得できた」とし、発電所内に改善への意欲が高いことを強調した。


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