[原子力産業新聞] 2006年2月2日 第2317号 <2面>

[原子力機構] 傷ついたDNA直す遺伝子 実用化に成功 機能解明等進め試薬を発売

 日本原子力研究開発機構は24日、放射線に強い微生物から見いだした「傷ついたDNAを直す全く新しい遺伝子」の機能解明を進め、国内メーカーに試料の提供や技術指導を行った結果、バイオ研究試薬として実用化に結びつけることに成功したと発表した。

 この放射線に強い微生物は、「デイノコッカス・ラジオデュランス」。生物の中で最も放射線に強い細菌で、1999年に全ゲノムが解読されてはいたものの、約半数の遺伝子は機能が未知であり、放射線に強い原因は明らかにされていなかったという。

 そこで原子力機構では、高崎量子応用研究所の量子ビーム施設「TIARA」等でガンマ線、イオンビームといった量子ビームを利用して、デイノコッカス・ラジオデュランスについて研究を実施したところ、放射線で傷ついたDNAを直す遺伝子「pprA」を2001年に発見。この遺伝子が作るタンパク質「PprA」は傷ついたDNAに結合し、高効率でDNAを直す機能があることが判明した。

 その後原子力機構では同タンパク質について、科学技術振興機構の技術移転支援制度を通じて国内のメーカーに試料の提供や技術の指導を行った結果、このほど「株式会社ニッポンジーン」から、従来製品より約10倍効率の高いDNA修復試薬「TA-Blunt Ligation Kit」として発売された。

 同試薬について原子力機構では、「遺伝子操作に欠かせないバイオ研究試薬として幅広い利用が見込まれる」としている。


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