[原子力産業新聞] 2006年2月9日 第2318号 <3面>

[IAEA緊急理事会] イラン問題を安保理付託 イラン、追加的協力を停止

 イランの保障措置協定違反問題を協議するため、国際原子力機関(IAEA)の緊急理事会(35か国)が2〜4日、ウィーンのIAEA本部で開かれ、イランの違反について国連安全保障理事会へ付託する決議を採択した。記者会見でエルバラダイ事務局長は、「我々は重要な段階にさしかかったが、危機的な状況ではない。まだ機会は開かれている」として、3月理事会で予定されている事務局長報告まで、イラン及び関係国が、外交努力と交渉によって問題を解決するよう呼びかけた(2面の関連コラム参照)。

 決議は、「過去3年間近く、IAEAが集中的な査察を行ってきたにもかかわらず、IAEAはイランの原子力計画についていまだいくつかの重要な点を解明できておらず、イランには申告されていない核物質や活動が存在しないとの結論が出せずにいる」と総括。イランの原子力計画に「深刻な懸念」を表明、「信頼性醸造」のためには長期間が必要だとした。

 この上で理事会はイランに対して、@全ての濃縮・再処理活動の全面凍結を再開することA重水炉建設を再考することB追加議定書を即時に批准・実施することC批准までの期間、これまでと同様に追加議定書に従うことD人員への質疑、軍事関連施設の視察など「透明化措置」を行うこと――などを要求。更にイランが、核兵器開発に必要な「ウラン金属半球」製造に関する書類を持っているにもかかわらず、IAEAに提出していないことに「重大な懸念」を表明した。

 この上で事務局長には、国連安保理に対して、イランが前記のことを求められていることと、この問題に関する全てのIAEAの報告書と決議等を伝達するよう求めた。イランに対しては、過去の違反に伴い、イランの意図に「信頼性が欠けている」と指摘、信頼性醸造の立場から、その立場を再考するよう求めた。

 IAEA理事会の動きに対して、イランのラリジャニ最高安全保障委員会事務局長は3日、エルバラダイ事務局長に書簡を送り、理事会の行動の法的根拠に疑義を示した後、イランの原子力開発計画は純粋に平和目的だと反論。これまでIAEAに行ってきた追加議定書に準用する「追加的、自発的な協力」を全て中断すると通告した。しかし、核不拡散条約(NPT)に基づく約束は遵守するとしている。


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