[原子力産業新聞] 2006年3月9日 第2322号 <2面>

[文科省] 第V期疫学調査まとめ 発電従事者への影響見られず

 文部科学省はこのほど原子力発電施設等の放射線業務従事者に係わる疫学的調査の第V期調査結果をまとめた。一部統計上の有意な差を示したが、過去の結果との一貫性はなく、「低線量の放射線が、がんの死亡率に影響を及ぼしている明らかな証拠は見られない」と判断した。

 この調査は放射線影響協会に委託、同協会に登録した従事者と一般男性の死亡率を比較し、累積被ばく線量との関係を調べるもの。90年から実施、5年毎に調査結果を公表している。

 今調査では従事者20万583人が対象で平均累計被ばく線量は約12.2mSv、平均従事年数は6.4年。91年度以降の追跡調査で平均7,670人の死亡を確認、この内がん死亡は3,093人で平均累計被ばく線量13.3mSv。

 全がんの標準化死亡比(観察死亡数/期待死亡数)は1.02で、前回調査同様に有意差は認められなかった。今回は肝がんと肺がんが有意に高かったが、過去の調査結果との一貫性はなく、非新生物疾患と非ホジキンリンパ腫は今回、有意に低くなったという。また、放射線の影響が比較的早期に現れるとされる白血病も、累計線量とともに死亡率が増加する有意な傾向はなかった。

 同協会では、今後とも調査を継続、観察人年を増やすとともに、発がんに関連する生活習慣等の交絡因子(喫煙、飲酒等)の影響も併せて調査する必要があるとしている。


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