[原子力産業新聞] 2006年3月9日 第2322号 <2面>

[原子力機構・国立成育医療センター] ITER技術で胎児治療

 日本原子力研究開発機構はこのほど、国際熱核融合実験炉(ITER)の要素技術として開発した複合型光ファイバー技術を利用し、国立成育医療センターの特殊診療部と共同で胎児治療に使用可能なレーザー照射機能を持つ極細内視鏡を開発した。

 同内視鏡は、双胎間輸血症候群や胎児脊髄髄膜瘤などの先天性疾患の外科治療用として開発したもの。これらの疾患では出生後の治療に限界があるため、一部の症例では胎児への治療、特に胎児内視鏡による外科治療が求められている。しかし狭い空間で子宮内に浮遊する胎児を対象とするため、現在の内視鏡手術機器では困難な点が多かった。

 原子力機構の複合型光ファイバー技術は、目視観察機能と患部を焼くためのレーザー照射機能を一体化、比較的容易に安全に正確なレーザー照射を可能とした。内視鏡の外径が2mmと小さいため、腹部に開ける穴も小さく、母体への負担が軽い。光ファイバー先端部のレンズは外径約1mmと極小化したが、40Wのレーザー出力でもレンズが損傷なく使用できる。

 国立成育医療センターの特殊診療部では今後、この装置を使用した動物実験や臨床試験を行う予定。


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