[原子力産業新聞] 2006年3月23日 第2324号 <1面>

[エネ調・自由化と原子力小委員会] 広域運用等で議論 国の「勧告権」強化には異論も

 経済産業省は17日、総合資源エネルギー調査会・原子力部会の下に設けられている「電力自由化と原子力に関する小委員会(委員長=田中知・東大院教授)」を開催。電力自由化環境の元で、原子力発電を着実に進めるための手段として、原子力発電所の広域運営等について、経産省から説明を受け、委員間で議論を行った。

 1995年前後から電力需要伸びが急激に鈍化し、また原子力発電は他の電源に比べて地元理解に時間を要するため、大幅に建設スケジュールが遅れる傾向がある。新規火力のリードタイムが10年程度なのに対し、新規原子力発電は概ね20年以上かかっているのが現状だ。

 これらのことから経産省は、投資負担の大きい原子力発電開発が将来、一層困難になるのではないかと懸念、広域運営が今後一層重要になるとしている。

 広域的運営については、現制度でも国が電力供給計画に対して勧告等を行える事になっている。しかし具体的要件等が明確になっていないことから、経産省は中長期的に国が「どのような役割を果たすことが出来るのかを検討すべき」と問題提起。原子力発電所の広域運営に関して、国が事業者に「勧告」などの強い措置を取ることができるようにすべきとの考えをにじませた。同様に、原子力発電と他電源の調整や、連携線・周波数変換所の増設についても、国の強い役割が必要との考えを示した。

 これに対して委員からは、「自由化市場で、勧告権は法的にも実際的にも成立しうるのか」、「ネックになっているのは地元問題であり、勧告権では解決できない」、「重要なのは、建設が必要な基数を目標として明確に定め、いかに建設するか考えること」などの意見が出された。


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