[原子力産業新聞] 2006年3月23日 第2324号 <1面>

[原産] 「ロードマップの詳細化を」 核融合開発検討会が報告

 日本原子力産業会議の核融合開発検討会(主査=井上信幸・東大名誉教授)は23日、「核融合開発における産業界の立場と役割」と題する報告をとりまとめ、発表した。昨今の核融合開発の状況を把握し、わが国産業界の取組を総括・評価するとともに、今後のあり方について検討したもの。(4面に概要)

 報告書ではまず、「核融合はエネルギー開発」と位置付ける一方、@核融合による発電は未だ実現・実証されていないA本当に実用可能かどうかも議論の対象B若手技術者・研究者の育成、学生たちが魅力を感じるアピールが必要――等を指摘している。また、核融合開発における産業界の参画状況について、欧州では「構造仕様」なのに対し、日本では「性能仕様」と、発注形態の相違を述べた。

 産業界における現状と課題については、JT−60の建設が最盛期だった80年代初期から、核融合売上高が年間約200億円で推移してきたが、ここ5年ほど同数十億円と激減しているのみならず、建設経験のある技術者が次世代に技術を継承できぬままリタイアしているという市場縮減による影響を分析。その上で、ITER建設地決定から、国の産業界への期待が再燃することを予想し、日本の役割をITER機構への機器物納と人材派遣を通じたシステム統合技術の獲得とした際、国内原型炉設計を展望した十分な精査、ITERで製作担当しない主要機器の製作技術維持の対策などを挙げた。ITER「幅広いアプローチ」への参画・協力にあたっては、@将来の活用シナリオを明確にした技術者の増強A日本が経験できないプラントのシステム統合技術、建設ノウハウ、許認可対応Bコスト削減――を産業界の課題として指摘している。

 結論として、「きちんとした技術基盤とそれを支える財政基盤」を確保し、核融合分野で日本が世界をリードしていくよう、@核融合を国家基幹技術として位置付けA国の開発計画および開発体制の明確化B原型炉を見据えて確保しておくべき技術への対応C適正かつ継続的な核融合開発の実施DITER建設と「幅広いアプローチ計画」への対応――について、国を中心に対策を考え、実行していく必要性を、今後の展開に向けて打ち出した。


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