[原子力産業新聞] 2006年3月30日 第2325号 <2面>

原子力学会春の年会・特別企画セッション 近藤、松浦両委員長、橋本知事、小谷町長などパネリスト 原子力機構の今後の展開等意見交換

 日本原子力学会は24日、茨城県・大洗町の大洗文化センターで2006年春の年会の現地特別企画セッションとして、パネル討論会「日本原子力研究開発機構への期待と今後の展開」を開催した(=写真)。このなかで岡ア俊雄・原子力機構副理事長は同機構の開かれた体制を一層充実するため、共用施設の拡大や利用者の増大策を進めるなどの方針を示した。

パネリストは近藤駿介・原子力委員長、松浦祥次郎・原子力安全委員長、橋本昌・茨城県知事、小谷隆亮・大洗町長、桝本晃章・電事連副会長、齊藤莊藏・電工会原子力政策委員長、岡ア俊雄・原子力機構副理事長。座長は鳥井弘之・東工大教授。テーマは我が国の原子力研究開発活動に対する機構の寄与、原子力安全確保の視点からの期待、立地自治体から見た地域共生への期待、機構の新たな取り組みの4つ。

研究開発の寄与では、近藤委員長が、各研究開発課題への取り組み、人材の育成、国際協力などにおける機構への期待や要望を示すとともに、原子力の特徴としてエネルギー供給や工業・農業の振興などとともに、広汎な学術の進歩や先端産業の基盤技術高度化に貢献している点を紹介。松浦委員長は、安全確保からの期待として、安全規制に貢献する安全研究の実施・推進、安全規制行政への支援・貢献、安全に係る地元との信頼関係の醸成の3課題について要請。安全研究では当面のニーズとして既存軽水炉の安全高度化、廃棄物処分への対応、中長期的ニーズとして次世代技術の安全への対応、国際的な安全規制・基準との調和などを挙げた。

地域共生では、橋本知事が、J―PARCへの強い期待を示し、海外からも研究者が集まる拠点になって欲しいと要請。併せて核融合やFBRなど次世代技術とともに、高温ガス炉など早期に成果が期待できるテーマへの注力も求めた。小谷町長は、大洗研究開発センターが水素製造の研究開発で世界最先端に立ち、関連企業が誘致されることへの期待を強調。長期的なまちづくり構想の1つとして、発電や水素製造など多目的に利用できる小型FBRを大洗町に建設、水素エネルギー社会をリードしたいとした。また大洗町は原子力と円滑な共生を果たしてきたとし、今後ともこの関係の堅持を求めた。

岡ア副理事長は、各テーマに対する機構の取り組みを説明するとともに、核不拡散科学技術センターなどシンクタンク機能の充実状況を説明。開かれた体制の充実として施設の共用、産学官との連携などの強化策を示した。外部利用が可能な共用施設は現在、JRR、TIARAなど12施設だが、今年度からタンデム加速器、光科学研究施設、放射光科学研究施設、タンデトロン施設の4施設を加え16施設とする。また、利用課題募集で定期公募を導入、利用料金も多様化する。

桝本副会長や齊藤委員長は事業者として、各テーマに要望。桝本副会長はFBRやその関連技術への取り組みに期待するとともに、六ヶ所サイクル事業に必要な技術基盤の維持、技術移転、人的支援などを要請した。


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