[原子力産業新聞] 2006年3月30日 第2325号 <3面>

[欧州委員会] EU共通エネ政策案を発表 エネ市場完全統合目指す

 欧州委員会は8日、EU加盟25か国共通のエネルギー政策の素案となる「グリーン・ペーパー」を発表。その中で、@EU域内のエネルギー市場統合A地球温暖化防止Bエネルギー・セキュリティ――などの観点から、重点6分野を発表した。

 重点分野は、@EUエネルギー市場の完全統合AEU加盟国の連帯強化BEU域内全体のエネルギー・ミックスC地球温暖化対策D新たなエネルギー技術の開発EEU域外からの資源輸入に対する共通政策――の6分野。

 ▽ EUエネルギー市場の完全統合 送電網の接続に伴う託送システムなどルールの整備や、市場の完全自由化など。
 ▽ EU加盟国の連帯強化 EU域内全体でのエネ・セキュリティ強化のため、需給パターンを監視する「欧州エネルギー供給監視機構」を設立する。
 ▽ EU域内全体のエネルギー・ミックス 再生可能エネから石炭火力、原子力などあらゆる電源を検討し、EU全体で最適なエネ・ミックスを達成する。
 ▽ 地球温暖化対策 エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの利用拡大、CO2の回収・固定、など地球温暖化対策を実施。
 ▽ 新たなエネルギー技術の開発 地球温暖化対策関連技術の戦略的開発を推進。
 ▽ EU域外からの資源輸入に対する共通政策 パイプラインやLNG備蓄庫などインフラの整備に努める。EUへの最大の資源供給国であるロシアへはEU全体として「ワン・ボイス」で臨む。

 欧州では、最近の原油高騰や記録的な寒波、今年始めに起こったロシアのウクライナへのガス供給停止などから、EU全体としての共通のエネルギー政策を求める声が高まっていた。

 EU全体のエネルギー・セキュリティを達成するためには、これまでのような国境の概念を捨て、EU域内に縦横無尽に送電設備を建設する資金力を持った複数の巨大企業が競い合う状況が必要だ。またロシアと対等に渡り合い、新しいエネルギー関連技術を開発する力を持つ、EU全体を代表する巨大企業の出現が望まれる。

 しかし最近、経済面でのEU統合の流れに明らかに逆行する傾向も起こっている。仏政府はイタリア電力公社(ENEL)による仏スエズ社買収を阻止すべく、スエズ社と仏ガス公社との合併を強引に推進している。スペイン政府も、民営化を準備していたスペイン電力公社(Endesa)が独Eonに買収されそうになると、民営化方針を撤回している。

 グリーン・ペーパーは、23日から開催されるEU首脳会議で協議される。


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