[原子力産業新聞] 2006年4月28日 第2329号 <3面>

日印協定に思いをはせよ 米印協力には日本も関与 遠藤哲也氏(前原子力委員長代理)

筆者は本紙4月13日号に「日本はインドとどう向き合うか」との小文を寄せ、日本は原子力政策大綱のラインに沿って日印協力を進めていくべきである旨を提案した。

大綱はインドを念頭に置いて次のように述べている。「協力を実施するに際しては、(中略)関連条約・枠組みへの加入遵守・状況等に留意する必要がある。しかし、相手国にこれらに欠けるところがある場合は、例えば国際機関における活動や、安全の確保といった普遍性の高い分野において限定的な交流を行なうなど、(中略)未来志向の考えに立った交流のあり方を検討すべきである。」

両国間で具体的にどのような協力や交流が可能かを検討していくためには、筆者はまずは日印間の原子力関係者のコンタクトを一層拡大しなければならないと提案した。

日印原子力協定

以上は、わが国としてのいわゆる主動的な協力だが、今般の米印核合意の結果として、他動的な影響が日印の原子力関係に及んで来る可能性がある。もちろんその前提として米印核合意が実を結ばねばならないが、それには2つの大きなハードルがある。

1つは米国の国内問題だが、連邦議会でNPT非加盟国への原子力輸出を禁止している原子力エネルギー法が改正されなければならない。

今1つは原子力供給グループ(NSG)のガイドラインが加盟45か国のコンセンサスで改正されなければならない。そのいずれもそう簡単でないし、いずれにせよかなりの時間がかかる。

2つのハードルがクリアされると、いよいよ米印間の協力が具体化する運びとなる。

その協力態様の1つは、米国からインドへのPWRにせよBWRにせよ原子炉、部品の輸出であろう。しかし、米国は1970年代の初めから40年間近くもの長い間自ら商業用原子炉を作ったことがなく、対印輸出といってもハードの面では外国からの供給に頼らざるを得ず、外国としては日本、フランス、韓国などが候補に上がって来よう。

いずれにせよ、日本側が米国からの要請をうけて対印輸出に意欲を示せば、日米連合による対印輸出となる可能性が大いにある。

他方、日本が原子力資機材を海外に輸出するには、平和利用の担保が必要で(1962年4月4日原子力委員会決定)、その担保としては通常、二国間の原子力協定が必要とされている。特に相手国がインドのようにNPTの非加盟国で、しかも「事実上」の核兵器国である場合には、二国間協定の締結は不可欠と考えてよかろう。

従って日本として対印輸出の可能性を考えるのであれば、急ぐ必要はないが、米印合意実現の前に横たわる2つのハードルの推移、更には米印二国間協定締結の状況にも注目しつつ、日印原子力協定について今から思いをはせるべきである。

インドが原子力の分野では極めて特殊な国だけに、協定交渉はそう簡単ではなかろう。いずれにせよ、とりあえずは先にも述べたとおりこれまでとかく薄かった日印間の人的交流を拡げていく事が望まれる。


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