[原子力産業新聞] 2006年5月25日 第2332号 <2面>

FBR炉心溶融実験に成功 安全評価に見通し 原子力機構 カザフで共同実験

日本原子力研究開発機構はカザフスタン共和国との共同研究で、FBRの炉心溶融事故を模擬した実験を行い、ナトリウム中での溶融燃料の移動の様子を把握することに成功した。同計画は同国の国立原子力研究センターにある実験専用炉であるIGR(インパルス黒鉛炉=写真)を使って平成12年度から開始され、日本原子力発電も協力している。

FBRの炉心溶融事故では、溶融した高温の燃料がどのような挙動をとるかが、事故の影響を左右するが、このような事故状況を模擬するためには、高い性能を持つ実験施設と高度な実験技術が必要で、規模の大きな実験は実施されてこなかった。従来のFBRの安全評価では、かなり保守的な想定をして、対策の妥当性を確認してきた。

今回の実験は、IGR内に設置した二重容器の中で燃料溶融状態を作り出して、ナトリウム中での溶融燃料の挙動を調べるもの。

実験は3月6日に実施、約8kgの試験燃料(濃縮度17%の二酸化ウラン)とナトリウム約9kgを用い、原子炉内に設置した中性子検出器など100を超える多数の計測器の信号変化などから、ナトリウム内の燃料移動の様子を把握することに成功した。

01年の最初の実験では、燃料ペレット数個規模から開始し、次第に燃料とナトリウムの量を増やしてきた。

今回得られた実験データは、これまで段階的に行ってきた実験データと合わせて、高温の溶融燃料が、ナトリウムと混合した後、適切に冷却されるまでの過程の確認に活用される。


Copyright (C) 2006 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.