[原子力産業新聞] 2006年6月1日 第2333号 <1面>

原子力部会が報告案骨子 「原子力立国」目指す FBR開発にも本腰 官民5者で研究会を設置

経済産業省は5月30日、総合資源エネルギー調査会の第11回原子力部会を開催、「原子力立国計画」と題する同部会とりまとめ案骨子を事務局が説明、委員から意見を聞いた。また、日本原子力研究開発機構が3月末にFBRサイクル実用化戦略調査研究(FS)フェーズUをまとめたことを受け、実証プロセスに向けた検討を、経産省、文科省、電気事業者、メーカー、原子力機構が共同で研究会を設置し、検討を進める方針を打ち出した。

「原子力立国計画」は、原子力政策立案にあたっての5つの基本方針として、@中長期的にブレない確固たる国家戦略と政策枠組みの確立A個々の施策や具体的時期については、国際情勢や技術の動向等に応じた「戦略的柔軟さ」を保持B国、電気事業者、メーカーが建設的協力関係を深化し真のコミュニケーションとビジョンを共有、国が大きな方向性を示し最初の一歩を踏み出すC国家戦略に沿った個別地域施策の重視D「開かれた公平な議論」に基づく政策決定による政策の安定性確保――を提示。

現状・課題と今後の対応では、過去2年間、原子力部会で議論されてきた原子力政策について、@現行水準以上の原子力発電比率の中長期的な実現に向けた取組A核燃料サイクルの着実な推進とサイクル関連産業の戦略的強化B高速増殖炉サイクルの早期実用化C技術・産業・人材の厚みの確保・発展D我が国原子力産業の国際展開支援E原子力発電拡大と核不拡散の両立に向けた国際的な枠組み作りへの積極的関与F原子力と国民・地域社会との共生G放射性廃棄物対策の着実な推進――の8章にまとめた。

委員からは、「非効率・非合理な規制を廃し、従業員の被ばく低減につながる合理的・科学的な規制を書き込むべき」(中島委員)、「国際協力のまとめ方が弱い」(佐々木委員)、「安全の確保と同時に、国民の理解と協力を得ることも大前提とすべき」(杉江委員)等の意見が出された。

FBRサイクルについては、FSフェーズU最終報告書を受け、経産省は、「これまでのATR等の開発にあたっては、研究開発から実用化への円滑な移行が行われなかった」ことを教訓に、2025年へ前倒しされた「ポストもんじゅ」の実証プロセスへスムーズに移行するために、相当前から関係者間で実証プロセスに向けた検討を進め、その結果をFSに反映することが不可欠と総括。関係5者による「研究会」を早急に設置し、開発スケジュールと実証ステップのあり方、実証プロセスへの移行に必要な条件等を検討する。経産省は、「足下の開発予算をしっかり確保」する決意を示している。


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