[原子力産業新聞] 2006年6月1日 第2333号 <2面>

日本学術会議 原子力総合シンポジウム開催 柘植総合科技会議議員 基本計画策定受け、「他分野の成果活用を」

日本学術会議総合工学委員会は5月29、30日、原子力総合シンポジウム「社会の発展に貢献する原子力科学技術」を開催した。このほど策定された第3期科学技術基本計画の1つの基本姿勢「社会・国民に支持され成果を還元する科学技術」をとらえ、原子力科学技術の役割について、共通の理解を深めるとともに、今後の方向を探るのがねらい。各セッション・特別講演では、同基本計画にうたわれる6つの政策大目標「飛躍知の発見・発明」、「科学技術の限界突破」、「環境と経済の両立」、「イノベーター日本」、「生涯はつらつ生活」、「安全が誇りとなる国」を巡って議論された。

冒頭の特別講演で、近藤駿介・原子力委員長(=写真)は、原子力政策大綱を踏まえた政府と民間に期待される重要な取組として、安全確保対策に関する国民との相互理解活動、高レベル放射性廃棄物最終処分地選定への最大限努力、立地地域が目指す持続的発展に向けた地元一員としての積極的参加などを掲げ、原子力発電については、引き続きわが国の基幹電源として、現在の建設計画を着実に進めていく姿勢を示した。

また、国際的取組については、核不拡散体制強化のための議論に積極的に参加するとともに、原子力発電導入を計画する途上国の環境整備に協力していく考えを述べた。

次に、柘植綾夫・総合科学技術会議議員は、「今、明治維新、戦後復興に続く第3の重大変革期にあり、科学と技術のパラダイムの再確認により21世紀の日本の姿を描いていく」必要を訴え、その上で、このほど策定された新科学技術基本計画の戦略重点科学技術に、原子力エネルギーが位置付けられたことは意義深いと述べた。一方で、「他の重点戦略分野の成果を活用することが原子力分野では意外と欠けている」と指摘し、産官学の原子力関係者が「イノベーション・パイプライン」を太くしていくことを強調した。

「環境と経済の両立」の議論で、鈴木達治郎・東京大学公共政策大学院客員教授は、持続可能性の条件として、「国際社会の安定性」、「市場メカニズムとの整合性」、「地域・市民社会の醸成」を掲げた。石油価格の高騰、資源の偏在・政治介入に加え、アジア地域におけるエネルギー消費の増加、化石燃料依存の南北格差といった最近のエネルギー問題を懸念する一方、「アジア太平洋パートナーシップ」、「原子力2010計画の推進」など、米国を中心とする気候変動対策、電力自由化に向けた新たな動きにも言及した。


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