[原子力産業新聞] 2006年6月8日 第2334号 <1面>

自主解決提案が重要 原産協会 シンポで米教訓学ぶ

日本原子力産業協会は2日、米国における原子力復活の立役者となった米原子力界の指導者5氏を招き、東京・有楽町のよみうりホールで、シンポジウム「よみがえるアメリカの原子力発電」を開催、600人を超える聴衆を集めた(=写真)。

来日し講演したのは、J.コルビン米原子力エネルギー協会(NEI)前理事長、R.メザーブ米原子力規制委員会(NRC)前委員長、D.ハインツ・エンタジー電力会社前社長、J.ローズ原子力発電運転協会(INPO)元理事長、K.イェーガー電力研究所(EPRI)前理事長の5氏(=3面に関連記事)。

午後のセッションでは、コルビン前NEI理事長がモデレーターを務め、米国からの5人がパネル討論を行い、米国での改革の意義をさらに掘り下げた。

99年から03年までNRC委員長を務めたメザーブ氏は、「事業者には経済的圧力がかかるかも知れないが、規制のある環境が必ずしも悪い環境ではなかった。規制緩和で悪い方向には行かなかった」と米国での経験を率直に述べた。

前EPRI理事長のイェーガー氏は、「プラントの寿命延長やリスク・アプローチなどは、国民をも満足させるものとなった」と研究成果を振り返った。

米国での電力会社の統合についてコルビン氏が尋ねたのに対して、メザーブ氏は「どうなるかは分からなかった。実績が悪化するとの懸念もあった。結果はより改善され、大きな電力会社が小さな会社を併合した」と語った。コルビン氏は「安全性、信頼性、経済性は同時にすべてを達成できることが教訓として得られた」と力強く語った。

メザーブ氏は「NRCは規制資源の配分を誤っていた。軽微な違反と重大なものとの区別が混在した。事業者、規制側、国民の3者がウィン、ウィン、ウィンの関係となった。公正で客観的な規制を実行しているとの信頼が得られるようになった」と振り返った。

プラント補修のあり方について、イェーガー氏は「検査の評価ができるようになった。特にオンラインでもできる」とした。

前エンタジー社のハインツ氏は、「燃料交換は25日未満のものも多く、オンライン・メンテナンスの効果が大きい。以前はすべての機器に対して同じことをやっていた。本当に何をやらなければならないかが大事だ」と語った。

元INPOのローズ氏は、会員からの情報を非公開にしている点について、「ベスト・プラクティス(最良事例)がどのレベルにまで到達しているか。電力会社も第三者との対応、訴訟問題を心配しなくてもすむ」との利点を強調した。

議論を総括したコルビン氏は、電力業界とNRCとの関係について、「解決策を自ら提案する機会が与えられている。どのように責任を果すかが重要で、NRCにどうしていいのかゲタを預けることはない」と述べた。


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