[原子力産業新聞] 2006年6月8日 第2334号 <3面>

ウラン資源量「十分に確保」 NEAがレッドブック刊行

経済協力開発機構・原子力機関(OECD・NEA)と国際原子力機関(IAEA)は1日、世界43か国から提供された公式データに基づき、2005年時点の世界のウラン資源、ウラン探査、生産および需給状況をとりまとめた報告書「2005年版ウラン──資源・生産・需要」(通称レッド・ブック)をとりまとめ刊行。ウラン価格は引き続き上昇するが、ウラン生産拡大への投資を促進し、将来にわたって十分な資源量が確保されるとの見通しを示した。

報告書によると、世界の確認資源と推定追加資源・区分Tを合わせた可採鉱量のうち、回収コストが130ドル/kgU未満の資源量は474万3,000トンU。これはここ数回の調査よりも増大しており、2004年の世界の原子力発電設備容量(3億7,000万kW)から計算すると、85年分もの資源量が確保されていることになる。

一方、ウラン価格(スポット)は1990年以来、@民間企業および軍事用の在庫の取崩しA再処理によるプルトニウム・回収ウランB劣化ウランの再濃縮――の2次供給源により供給過多となった影響で価格が低迷していた。しかし世界的な原子力ルネサンスにより原子力発電への注目が集まったことや、ウラン価格の低迷がもたらした投資減退によるウラン供給力の低下などから、2001年から価格が上昇に転じた。現在では約112ドル/kgUとなり、2001年時点の5倍以上に急騰している。報告書は今後も価格の上昇傾向が続くと予測している。

なおウラン価格が原子力発電コストに占める割合はわずか5%であり、ウラン価格の高騰が原子力発電コストに与える影響はほとんどない。それに対し天然ガスの場合、天然ガス価格が火力発電コストの75%を占めており、不安定な天然ガス価格が火力発電コストに大きな影響を与えている。

ウランの需給面を見ると、2004年のウラン生産量は合計4万263トンUで、運転中の商業用原子炉所要量(6万7,450トンU)の約6割を供給。不足分は2次供給源で補っている。しかし2次供給源はすでに減少傾向にあり、1次供給源(ウラン鉱山・鉱床)からのウラン生産のより一層の拡大が求められている。こうしたことから近年、ウラン生産拡大への投資が活発化しており、2004年には世界全体で1億3,300万ドル(2002年比40%増)が投資された。また数多くの新規鉱山開発計画も発表されており、報告書は、「順調に進めば年間ウラン生産量は現在よりもさらに約3万トンU拡大する」と予測している。

さらに報告書は、世界の原子力発電設備容量は、2025年までに4億4,900万kW〜5億3,300万kWに達すると見込んでおり、それにともない、原子力発電での需要も8万〜10万トンUに達すると予測。しかし、「現在想定されているウラン生産能力で、世界のウラン需要を十分にまかなえる。高速炉利用が一般化すれば、ウランの需給状況は飛躍的に向上する」と、ウラン需給は将来的にも安泰と結論している。


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