[原子力産業新聞] 2006年6月8日 第2334号 <3面>

コルビンNEI前理事長、メザーブNRC委員長など 米原子力復活の秘訣を講演 安全性向上、高利用率への努力語る

1面所報のとおり、原産協会は2日、米原子力界の指導者5氏を招き、シンポジウム「よみがえるアメリカの原子力発電」を開催した。

J.コルビン米原子力エネルギー協会(NEI)前理事長(=写真右)は、米国における原子力ルネッサンス興隆の原因として、@原子力の戦略的・環境的価値への認識の高まりA優れた安全性と経済的な運転実績B原子力発電がコアビジネスにC運転許認可の更新D新規原子力発電所の計画――を指摘。また、安全文化の重視、効果的な原子力規制、NEIの創設、電力の規制緩和などが大きな要因だとした。

コルビン氏は米国の電力供給の約50%を石炭火力に、さらに原子力とガスに各19%に頼っており、特に1995年頃から、新規発電所は実質的にガス火力のみとなっている現状を紹介。原子力発電については、1970年の20基がTMI事故翌年の1980年には71基に急成長、その後伸びは鈍ったものの、一九九〇年の111基に増加し、現在の103基に至ったとした。

米原子力発電所の設備利用率については、TMI事故後は60%前後に低迷したが、米原子力産業界は「電力産業リーダー委員」を設置、またINPOを創設して、安全性と信頼性の向上に努め、その結果、利用率は70%へと回復した。1996〜98年に一時、利用率が低迷したが、これはNRC規制上の問題と判明、客観的規制への規制改革の必要性が強く唱えられた。

2000年代に入ってからは、利用率は90%前後で安定。このこともあって、米国の電源別発電コストでは、原子力が最近、石炭を下回るようになり、全電源の中で最も経済的となっている。

米国民の原子力支持率は、1980年代の賛否ほぼ同率から、2006年には賛成68%、反対29%と、賛成が大きく上回る状態に変化。「パブリック・アクセプタンスで劇的な改善が見られた」としている。

次に、「原子力の実績改善にとって重要な要点―NRCの視点」と題して講演したR.メザーブ米原子力規制委員会(NRC)前委員長(=写真左)は、原子力安全について、TMI事故は人間の行動が機器と同様に重要であることを示したと指摘、「強力な安全文化が不可欠」と述べた。

NRCは、従来の主観的で不透明な判断基準、安全限界値の不定など問題のあった規制監視プロセスを、客観的、定量的な成績指標、数値化された明確な安全限界値、透明な評価基準・手法など、科学的・合理的なプロセスへと「変えなければならなかった」と指摘。日本でも同様の変化に期待を寄せた。

メザーブ氏は、「透明でオープンな対話」が、国民の信頼を高め、意志決定を改善しその安定性、受容性を高めるとして、「透明性、オープンさ」の重要性を強調。「原子力産業界において、密室で行われるすべてのことは、疑いの目を持って見られている」と指摘した。


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