[原子力産業新聞] 2006年7月13日 第2339号 <4面>

原子力機構 水素製造用硫酸分解器を試作

日本原子力研究開発機構はこのほど、ISプロセス法の水素製造に不可欠な硫酸分解器(=図)の試作に成功した。炭化ケイ素セラミックス製多孔円筒型ブロックを積重ねた構造により、毎時30立方mの水素製造規模を達成。ISプロセス実用化に向け大きく前進する成果としている。

ISプロセス法は原料の水をヨウ素(I)や硫黄(S)の化合物と反応させ、生成するヨウ化水素および硫酸に熱を加えて分解し、水素と酸素を製造する。この分解の熱源に高温ガス炉の900度Cのヘリウムガスを使用するが、硫酸分解器は濃硫酸を蒸発させるため、高い耐食性や熱伝導率とともに、大型化が可能、十分な構造強度、高い気密性などが求められる。

今回の成果はこれらを達成するもので、材料に耐食性や熱伝導率に優れる炭化ケイ素セラミックスを選定。同セラミックスは製造できる大きさに限界があり構造強度も考慮して、多孔円筒型のブロックを積み重ねる構造とした。これらは東芝との共同考案による。

試作した硫酸分解器は直径14.8mmの貫通孔70本を有するブロックを2個積重ねており、ヘリウムガスは40気圧で入口温度710度C、出口温度535度C。原子力機構は室温における耐圧試験やリーク試験とともに、地震荷重を模擬した水平荷重試験を行い法令で定める耐震性能も確認した。


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