[原子力産業新聞] 2006年7月27日 第2341号 <3面>

米国の温暖化対策で講演 ワトソン特別代表 「原子力不可欠」と強調

原産協会は21日、東京・港区で「米国の地球温暖化防止政策とポスト京都」をテーマに講演会を開催。米国務省地球温暖化問題特別代表を務めるH.ワトソン氏(=写真)が講演し、温室効果ガス(GHG)削減に向けた米国の取り組みについて説明した。

ワトソン氏は、「2002〜2012年でGHGを18%削減する」ことがブッシュ政権のすべての施策のベースになっていると指摘。気候変動科学プログラム(CCSP)や気候変動技術プログラム(CCTP)に、過去6年間で250億ドルもの多額の予算を配分している事実に言及し、京都議定書からの離脱により「温暖化防止に消極的」とみなされがちな米国が対策に積極的に取り組んでいる点を強調した。

また京都議定書について、「議定書に参加した多くの国々が議定書の順守に苦しんでいる。京都議定書では、GHG排出量の急増している中国・インドなど発展途上国のエネルギー消費を抑制させることは出来ない」と効果に疑問を提示。それに代わるものとして、現在行動計画を策定中の「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)について説明した。

APPは昨年7月、環境問題に対処するための枠組みとして米国を中心に日本、オーストラリア、インド、中国、韓国が参加して発足。京都議定書が数値目標に基づくトップダウン方式であるのに対して、APPは技術移転に注目したボトムアップ方式であるのが特徴だ。新たな投資機会の創出や国際間の連携の推進、クリーンでより効率的な技術の導入推進の場として位置付けられている。

APPは特に石炭分野を重視しており、中国・インドなどの低効率な石炭発電国に対する技術協力を通した、温暖化や大気汚染の改善を視野に入れている。しかしワトソン氏は、APPの行動計画の中に原子力が盛り込まれるとの見通しを明らかにし、「原子力や再生可能エネルギーなどを効率よく使用しない限りGHG削減は不可能」と強調した。


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