[原子力産業新聞] 2006年7月27日 第2341号 <4面>

FBR調査報告評価で中間整理 補完候補は1種類に集約へ

文部科学省の原子力分野の研究開発に関する委員会(主査=田中知・東京大学大学院教授)は21日、第19回会合を開催、「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズU最終報告書」に対する評価報告書の中間整理案を審議した。同委員会は9月上旬には報告書案全体を取りまとめる予定。

報告書は1部の実用化に向けて、2部の技術的検討、3部の今後の進め方という構成の予定。この内、中間整理案はこれまで審議を重ねた1部と2部を中心にまとめた。1部ではFBRサイクルのビジョンや国内外動向、進むべき道筋など、2部では実用化概念の選択、主概念の開発目標や課題などを示す。

実用化概念の選択の基本的な考え方としては、「選択と集中」と「柔軟性」のバランスを掲げる。重点化投資は重要だが、同時に開発は長期間を要し、今後の技術革新を注視、柔軟性も必要と判断する。その上で、主概念はフェーズU最終報告書に示す通り、ナトリウム冷却炉と先進湿式、簡素化ペレット法(MOX燃料)の組合せが適切と判断した。

一方、補完概念はナトリウム冷却炉と金属電解法、射出鋳造法(金属燃料)とする。核分裂に寄与する中性子効率が高く、高増殖比を確保しやすい金属燃料は米国が実用化に向けた研究開発を進めており、柔軟性を維持する上で必要な補完概念に位置付ける意向。最終報告書で、もう1つの補完概念に挙げたヘリウムガス冷却炉と先進湿式法、被覆燃料(窒化物燃料)の組合せは現在のところ同概念としない方針。このためヘリウムガス冷却炉はGIFを中心に国際協力主体で進めることになる。

同委員会では9月上旬までには、3部となる2015年までの研究開発計画や研究開発の進め方についても取りまとめる方針。今後、実用化戦略調査研究は戦略調査のための研究から、実用化に向けた研究にシフトし、「高速増殖炉サイクル実用化研究開発(仮称)」として、研究開発を加速する方針も示しており、ナトリウム冷却炉に関する技術課題13項目、燃料サイクルシステムに関する技術課題12項目に対する研究開発計画の前倒し策などを盛込む予定としている。

なお報告書案は主に政策面を同委員会、技術面を作業部会で検討中。


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