[原子力産業新聞] 2006年8月10日 第2343号 <2面>

基盤機構 社会分野で研究成果発表 「中立広報が必要」

原子力安全基盤機構は1日、富国生命ビル(東京・千代田区)で、「人文・社会科学分野原子力安全基盤調査研究ワークショップ」を開催した(=写真)。人文・社会科学の立場から原子力安全基盤の充実につながるユニークな研究テーマを公募したものの成果について発表するもの。

今回は、電力中央研究所の「倫理コンプライアンスの実効性検証と向上策」と、環境情報科学センターの「リスクリテラシー向上のための広報広聴体制と住民参画の研究」の2件について、研究成果が披露された後、それらを総括するパネルディスカッションを行った。

大歳幸男・環境情報科学センター特別研究員は、広報広聴体制のあり方で、中立の立場でよいことも悪いことも伝えていく「ブリッジセクター」を地域から人材育成し、住民のリスク・リテラシー向上を図っていくなど、事業者との双方向の関係をバランスよく保っていくことを提言した。これに対しパネル討論で、浅田浄江・ウィメンズエナジーネットワーク代表は、女性を対象としたコミュニティ活動の経験から、「何を伝えたいかではなく、何を知りたがっているかを感じとり自分の言葉で心から発する」重要性を訴え、また、土田俊昭・東京電力原子力技術・品質安全部長代理は、これまでの不祥事対応を振り返り、技術者自らによるコミュニケーションも必要と述べた。科学技術政策に市民が直接参加する「コンセンサス会議」を試行した小林傳司・大阪大学教授は、天災による死亡者が激減してきた現代、安全に対する要求水準が高くなったことから、「技術的にはよいことであっても国民が受け入れてくれる時代ではなくなった」として、事故により原子力に対するイメージが悪化していくことを懸念した。


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