[原子力産業新聞] 2006年8月31日 第2345号 <1面>

07年度概算要求 文科・経産で4,755億 原子力、二桁に迫る伸び

経済産業省と文部科学省は25日と29日、それぞれ07年度予算の概算要求を発表した。両省合わせ原子力関係は、今年度予算比9.3%増の4,755億円、エネルギー分野や量子ビーム応用など原子力の重要性が高まるなか意欲的な要求となった。文科省はFBRサイクル実用化研究に同3.7倍の95億円、ITER計画に同5.5倍の77億円などとともにRI・研廃処分で47億円を新規に要求。経産省はFBRサイクル技術開発40億円、海外ウラン探鉱支援13億円、原子力人材育成プログラム3億円などを新規に盛込んだ。

◇    ◇

文科省の原子力関係の総額は同6.7%増の2,855億円。国家基幹技術のFBRサイクル開発関連の総額は同9%増の401億円で、改造工事を終えプラント確認試験を予定する「もんじゅ」に同19%減の179億円、戦略調査研究フェーズUを受け革新技術に取組む実用化研究開発に95億円のほか、「常陽」に38億円、MOX燃料開発に49億円など。

ITER計画の内訳は我が国が分担する機器の製作などに36億円、六ヶ所村での幅広いアプローチの研究施設整備などに41億円。このほか高レベル放射性廃棄物処分技術開発が同額の90億円、大強度陽子加速器(J―PARC)計画が同5%減の294億円、競争的資金制度を適用する原子力システム研究開発委託費が同13%減の55億円、重粒子線がん治療研究が同15%増の63億円などで、材料試験炉(JMTR)の改修費も15億円を盛込んでいる。

原子力技術に対する取組み強化により、減少傾向が続いてきた日本原子力研究開発機構の国庫支出要求額も07年度は同9%増の2,073億円と増加に転じる。

文科省の区分上、原子力関係に含めていないが、国家基幹技術のX線自由電子レーザー開発も同3.4倍の78億円、欧米に先んじた成果の創出を目指す。

経産省は原子力関係を今年度から「原子力立国計画」の推進と位置づけた。同計画の総額は同13.3%増の1,900億円。内訳はFBR技術開発/ウラン資源確保/人材育成等が同29%増の173億円、保安院関係が同額の337億円、各種交付金の地域共生が同16%増の1,383億円、他7億円など。

新規事業のFBR技術開発では文科省と連携し「FBRサイクル実用化研究開発」を推進、実証炉の技術開発に34億円、次世代再処理技術と調和可能な回収ウラン転換前高除染プロセス開発に6億円を計上した。

ウラン資源確保では石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じ我が国民間事業者の海外ウラン探鉱事業を支援。また、原子力人材育成プログラム3億円を文科省(2億円)と連携して創設し、産業現場でのインターンシップや産業界のニーズを踏まえたカリキュラム構築など、大学・大学院における人材育成・研究活動の充実への取組みを支援する。このほか次世代軽水炉開発プロジェクトのFS0.5億円が2年目に入り、放射性廃棄物対策もTRUの処分技術などの研究開発を強化するため同19%増の51億円と増額する。

保安院関係では高経年化対策同61%増の22億円、耐震安全性対策同額の14億円、原子力防災・核物質防護対策同8%増の82億円など。新規では使用済み燃料貯蔵施設において貯蔵される同燃料の健全性に係わる技術調査費用として3億円を計上した。

地域共生では原子力発電所、核燃料サイクル施設の立地を推進するため、立地地域の自主的・自立的な発展への支援を強化する。併せて、高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地の選定を促進するため、文献調査段階の電源立地地域対策交付金の交付額をこれまでの単年度当たり2.1億円から同10億円(総額20億円)に拡充する。

なお、07年通常国会にはエネルギー関係の特別会計に関する制度改正の法案が提出される見通し。石油特会と電源特会が統合されるとともに、電源特会の財源である電源開発促進税(07年度37.5銭/kWh)もいったん一般会計に繰入れた後、必要額を改めて特別会計に組入れる仕組みとなるが、今回の概算要求はこれまでの特別会計の仕組みによる。


Copyright (C) 2006 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.