[原子力産業新聞] 2006年9月21日 第2348号 <1面>

第50回IAEA総会が開幕 「供給保証と核不拡散」特別会合も 各国提案の目的は共有

【ウィーン18日=喜多智彦記者】国際原子力機関(IAEA)設立以来、節目の第50回総会が18日、ウィーンのオーストリア・センターで開幕した。今総会では、IAEAの過去50年を振り返る様々なイベントや展示に加え、「21世紀の原子力利用での新たな枠組み――供給保証と核不拡散」と題する3日間の「スペシャル・イベント」会議が組まれていることが特徴で、同会議には日本から近藤駿介・原子力委員長と、服部拓也・原産協会副会長が講演を行う。

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総会では冒頭、H.フィッシャー・オーストリア大統領の演説、アナン国連事務総長のビデオ・メッセージなどが披露された。

総括演説の中でエルバラダイ事務局長は「記念の年とは、過去を振り返り、決意を新たにする時」だとし、近年、世界的なエネルギー需要の急増によるエネルギー資源価格の高騰、地球温暖化の懸念、原子力発電所の安全運転の記録などから、「原子力発電の役割に対する期待が急激に高まっている」と総括。新規原子力発電所28基のうち、16基が途上国で建設されているなど、新たな国々で原子力発電拡大が始まっていると指摘した。

今総会の目玉の1つである「供給保証枠組み」についてエルバラダイ事務局長は、@核燃料供給保証の枠組み樹立A供給保証の確立B現存する濃縮・再処理施設を多国間管理の元に移管し、その後の新規施設は多国間管理に限定する――などの構想を発表。実現すれば日本にも多大な影響を及ぼすことになる。

米国を代表して演説を行ったボドマン米エネルギー省(DOE)長官は、供給保証について米国の国際原子力パートナーシップ(GNEP)の他、IAEA、ロシアなどから様々な構想が出されていることについて、「これらが目指す共通の目的に比べれば、その差は小さい」とし、レーガン元大統領が「自分の手柄にならないことを気にさえしなければ、成し遂げられることは無限にある」と述べたことを引用し、米国がGNEP提案だけに必ずしもこだわらないとの姿勢を示した。

日本の松田岩夫科学技術政策担当大臣は、供給保証に関する日本の提案「IAEA核燃料供給登録システム」について、6月理事会に提出された「6か国提案」を「補完するもの」と説明。ウラン濃縮だけでなく、フロントエンドの全要素をカバーし、「多くの国が、それぞれの多様性を反映しながら参加でき、貢献できる」システムだと説明、これによって市場の失敗にも対応できると述べた。総会は22日に閉会する。


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