[原子力産業新聞] 2006年9月28日 第2349号 <1面>

IAEA特別会議 各国が供給保証の新提案 近藤委員長も日本独自案 燃料供給の登録システムを

【ウィーン21日=喜多智彦記者】ウィーンで開かれているIAEA総会と並行して19日開会した「21世紀の原子力利用での新たな枠組み――供給保証と核不拡散」と題する3日間の特別会議(=写真)には、各国代表や専門家など約300名が参加、各国から核燃料供給保証に関する新たな提案などが発表された。また日本からは、近藤駿介・原子力委員長と服部拓也・日本原子力産業協会副会長が講演を行った。

核燃料の供給保証については、IAEAの6月理事会に6か国が共同提案を提出したほか、米国から17トンの高濃縮ウラン提供の提案が行われている。今会議では日本政府が「IAEA核燃料供給登録システム」の新提案を行ったほか、英国とドイツ外務大臣などから新提案が出され、また、米民間団体「核脅威削減評議会(NTI)」は、供給保証のために5,000万ドルを拠出する意向を明らかにした。NTIは、米CNN創設者のターナー氏とナン元米上院議員などが創設した団体。同会合でナン元上院議員が明らかにした。

新たな諸提案の出現により、会議では、核燃料供給保証構想について、時間をかけてIAEA事務局が検討していくことで合意した。

会議冒頭、エルバラダイIAEA事務局長は、「今日我々は、世界的なエネルギー需要増から来る原子力発電拡大の可能性と、機微原子力技術の拡散による核拡散リスクの増大という、2つの問題に直面している」と総括。このため、核燃料サイクルに関する新たな国際枠組みが必要だとして、持論としている、@核燃料供給保証の枠組み樹立A動力炉についても供給保証体制の確立B現存する濃縮・再処理施設を多国間管理の下に移管し、その後の新規施設建設を制限――の3段階論を展開した。

原産協会の服部副会長は、「供給保証の枠組み―制度的な見地」のセッションにおいて、「供給保証戦略―日本原子力産業界からの展望」と題して講演。服部氏は、日本政府提案に強い支持を表明した後、日本の電力会社が採っている供給保証戦略について、@長期契約の多用A購入元の多様化B核燃料サイクル施設での仕掛品――の3点から説明。核燃料サイクル施設を持つ国と持たない国に区別することは、核不拡散条約(NPT)との整合性から問題があるとの認識を表明。あくまでNPTを補完するシステムにすべきと述べた。

日本の電力会社が欧州と日本の再処理施設に保有する7,000トンに及ぶ回収ウランでは、「商業ベースで国際的な燃料バンク等に提供する」ことを検討できると提案。核燃料の成型加工サービスも提供可能だとし、長期的には濃縮サービス提供の可能性を示して、国際的な供給保証体制の樹立に貢献していく姿勢を明確に示した。


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