[原子力産業新聞] 2006年9月28日 第2349号 <2面>

「原子力情勢の今」を読む 原産協会理事に聞くE
国家戦略的事業と位置付け 日本土木工業協会会長(大成建設社長) 葉山莞児氏

――安倍内閣がスタート、政界も原子力も新時代を迎えた。建設業界の視点からお話を。

葉山 「原子力立国計画」で原子力発電比率30〜40%+α確保を明確にした中で、+αは10%ぐらいを目指したいと言われ始めた。原子力がエネルギー安全保障、地球温暖化防止の観点から重要性を増しており、まったく同感だ。

建設業界における原子力は、国家戦略的事業分野であり重要だという認識である。業界の原子力関連工事は土木・建築合わせて20年前がピークで、その後、特にこの10年間は激減、ここ2年ほどで持ち直しつつある状況である。原子力のシェアは必ずしも高くないが、建設産業はこれまでも社会資本整備の一翼を担ってきており、原子力分野においても業界として貢献したいと思っている。

建設業界には主に2つの課題が与えられている。

1つは、2030年頃からと見込まれているリプレース需要への対応である。これはこれまでの技術で十分対応できる。

2つ目は、原子力発電所のバックエンド部分における対応である。原子力発電所は、新規に建設、一定年限運転すれば、デコミッショニング(廃止措置)し、放射性廃棄物を処分、という一連の流れとなっている。現状は建設・運転の実績は蓄積されているものの、以降の部分については十分でない。問題は、これから本格化するデコミッショニングおよび高レベル放射性廃棄物処分場等のバックエンド部分で、これは従来技術の延長だけでは対応できない。建設業界の技術力が期待されている分野だと感じている。

そこでデコミッショニング工事発注側には、例えば無人化施工技術など、より安全で短工期の新技術を採用するなど戦略的発注をお願いしたい。

また難航する最終処分場の候補地選定については、国が前面に出て積極的に推進してもらいたい。

――原子力発電所は電力、メーカー、ゼネコンが三位一体となって完成する。それにしてはゼネコンの影が薄く、顔が見えないのでは。

葉山 原子力の実ビジネスが停滞する中でも、建設各社は専門部署を設けて対応している。将来の需要に対しても備えはできている。

原子力発電所の建設では、ゼネコンは設計段階から電力、メーカーと一体で取り組み、例えば耐震については周りの建物などがかなりダメージを受けても、原子力発電所は耐え得るようなしっかりした耐震構造にしている。

また、前述の通り、バックエンド分野についても建設業界の原子力に果たす役割は大きい。それだけに、今後は建設業界の代表であることをしっかり認識し、建設業界の「顔」が見えるよう活動に取り組んでいきたい。

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[略歴]1960年、東京大学工学部土木工学科卒、大成建設入社、取締役、常務、専務、副社長を経て、01年から社長。


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