[原子力産業新聞] 2006年9月28日 第2349号 <4面>

理研/東北大 塩害水田でも育つ稲を作出

理化学研究所と東北大学はこのほど共同で、炭素の重イオンビーム照射により、塩害水田でもすくすく育つ耐塩性イネ(=写真)の作出に成功した。

理研・仁科加速器研究センターのリングサイクロトロンの重イオンビームを使用、同センター生物照射チームの阿部知子副チームリーダーと東北大学大学院生命科学研究科の佐藤雅志助教授の成果。新品種として親しまれている「日本晴」の催芽種子に、核子あたり135MeVの炭素イオンを20〜40Gy照射。これを圃場で栽培、照射個体から得た第2世代となる種子を耐塩性の選抜に用いた。耐塩性は従来品種に比べ1.5倍としている。

重イオンビームの突然変異誘発法は、低線量照射でも遺伝子の変異率が高く、変異の固定期間も短いことが特徴。今回もわずか2年で品種改良に成功した。

塩害はアフリカ、アジア、アメリカなど世界的に深刻化している。今回作出した変異株を交配親として用いることにより、栽培イネに耐塩性を付与できると考えられ、塩害が進んでいる耕地でも栽培できるイネの育種の進展が期待される。


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