[原子力産業新聞] 2006年10月5日 第2350号 <2面>

「原子力情勢の今」を読む 原産協会理事に聞くF
ノウハウを国際貢献につなげたい 日本原燃社長 兒島伊佐美氏

――苦節20年、わが国が悲願としてきた「準国産エネルギー体制確立」に向け、六ヶ所再処理工場操業の展望は開けたのか。

兒島 六ヶ所再処理工場は、青森県および六ヶ所村より立地の基本了解を得てから20年余の歳月を経て、今年3月に実際の使用済燃料を使った「アクティブ試験」を開始した。8月には第2ステップに入り、本格操業を目指して安全確保と品質管理の徹底を最優先にした上で、試験を一歩ずつ慎重かつ着実に進めている。こうした中、原子力に対し国内外からフォローの風が吹き始めた。

とりわけ、国内では「原子力立国計画」でエネルギー安全保障および地球環境保全の両面から、原子燃料サイクルの確立の重要性が改めて確認・強調された。それだけに、私どもが果たすべき使命の大きさと社会的責任の重さを痛感する。同時に、二十数年前にこの青森の地でサイクル事業を息づかせた先達の先見性と行動力に深い敬意を感じる。その志を受け継ぐ私どもは、安全を第1とした企業風土、企業文化を構築し、定着させる大切な時期だと認識しており、協力会社と一体となり、ヒューマンエラー防止の小集団活動に私が先頭に立って取り組み、現場からの安全意識徹底と絶え間ない品質保証活動の確立に努めている。

次いで、世界に目を転じると、「原子力ルネサンス」の国際的機運が広まっている。今後の国際的な社会貢献の視点で、六ヶ所再処理工場を通じて得た貴重な経験・知見、混合脱硝や保障措置の技術を有する当社の特長を生かし、国際資源問題の解決と原子力平和利用・核不拡散のお役に立ちたい。そうした将来展望も踏まえ今回、米国の「GNEP計画」早期立ち上げ提案募集の1つに、当社も日本原子力研究開発機構および関係メーカー各社と一体となり、参画する意思表明を行った。将来、こうした国際プロジェクトを通じて得た知見・ノウハウは今後の再処理工場の長期的な安全安定運転・保守面で必ず役に立つと考えている。

――六ヶ所再処理工場のアクティブ試験開始以来、国内外から視察申し込みが殺到しているようだが、どうか。

兒島 これまで、地元六ヶ所村、青森県をはじめ国内各県、さらに海外からも多くの方に当社施設を視察いただき、特に、六ヶ所原燃PRセンターへの来場者は年間10万人にも上る。最近は教育関係者も多く、サイクル事業について真剣かつ多岐にわたる質問から、一種の熱気さえ感じられる。

私は今、わが国原子力産業界は良いモノをつくるという点で、既に世界トップの実力を持っていると確信している。それだけに原産協会には、日本の原子力産業界の総力を結集して、原子燃料サイクルを含めた「原子力ルネサンス時代」を日本発で切り開き、世界へ広げる役割を担ってほしい。

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[略歴]1960年、東北大学法学部卒、東京電力入社、取締役、常務、副社長から電気事業連合会副会長を経て、04年から現職。


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