[原子力産業新聞] 2006年10月12日 第2351号 <2面>

鳥井東工大教授 科技カウンセラー5万人構想を提唱

原子力研究バックエンド推進センターは5日、三会堂ビル(東京・港区)で報告・講演会を開催した。同センターの最近の事業報告と併せ、特別講演が行われ、その中で鳥井弘之・東京工業大学原子炉工学研究所教授(=写真)は、第3期科学技術基本計画で今後5年間に目標としている研究開発投資額25兆円のうち、1%を充当して科学技術カウンセラー活動を全国で展開する「カウンセラー5万人計画」を提唱した。

鳥井教授は、「安全・安心社会を考える」と題した本講演で先ず、「不安に感じることを挙げて欲しい」という問いに対し、自由に記述する形式では「原子力」を挙げる人は非常に少ないものの、「原子力」を含む項目群から選択する形式を採ると、多くの人が「原子力」を挙げるという社会調査の経験を示し、「普段は原子力で心を乱されていないが、質問の刺激で原子力が意識にのぼる」と分析した。

また、「危機の発生確率×被害規模」で表される社会的リスクはマスコミ等からの情報を得やすいのに対し、個人的リスクは「個人が巻き込まれる確率」も関与し、知る仕組みが十分でないことから人々の不安を煽り、反対運動の要因になりやすいと指摘した。その上で、人々が原子力に抱くような不安の解消には、個人的リスクをどう認識・評価するかがポイントだとして、科学技術リテラシーを市民に構築することが、安心社会の実現に向けて重要だと述べた。

結びに、鳥井教授は、科学技術基本計画の目標とする5年間で25兆円の研究開発投資のうち、1%を科学技術カウンセラーの活動に当て、年間500億円で5万人のカウンセラーを全国に配置する構想を提唱し、原子力関係者らにも協力を呼びかけた。


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