[原子力産業新聞] 2006年10月12日 第2351号 <2面>

「原子力情勢の今」を読む 原産協会理事に聞くG(最終回)
“胸を張れる原子力”へ向けて 敦賀市長 河瀬一治氏

――約4年前、河瀬市長の発言、「原子力というと、下を向かなければいけない雰囲気があるのはなぜか」が印象的。今はどうか。

河瀬 ひところは原子力に厳しい風が吹き、事故や不祥事が重なったこともあり、発電電力量の3割以上を占める基幹電源にもかかわらず、原子力発電というと何か悪いことをしているような雰囲気があった。それが今は、エネルギーセキュリティーと地球環境対策の両面から原子力が国家戦略的重みを増し、また、われわれを支援し共存共栄の精神で頑張ってきた人たちの努力も報われ、“晴れ舞台”に上がったような感じで、大変うれしく思っている。

敦賀市は、最初に原子力発電を誘致してから40年の歴史があり、軽水炉や高速増殖原型炉「もんじゅ」等、建設準備中も含め6基が立地し、福井県の嶺南地域全体で関西圏の電力需要の約半分を支える原子力発電所の集積地である。立地地域あっての原子力だが、先人の努力、長い歴史から地域住民も原子力に対しあるていど理解のある土壌だったお陰で、これまで粛々と対応して来れたと思う。

私が敦賀市長に就任した年に、「もんじゅ」の2次系ナトリウム漏れ事故が起き、原子力慎重派の人たちが県外からも多数押しかけた。そういう中でも私は、市議会議員、県議会議員時代からの信念である、「原子力と共存共栄していく」のスタンスを変えなかった。今回、国も原子力政策大綱で立地地域との関係を明確にし、原子力立国計画につなげてもらった。

原子力は取り扱いを間違えれば危険だが、その本質、仕組みを正確に理解していれば、単なる恐怖心は起きない。そこが肝心であり、私どもは原子力についてそうした正しい理解が全国大で進むよう、文科省に小中学生からのエネルギー・原子力教育の充実を要望しており、原産協会にも産業界あげて国民への理解浸透に貢献してほしい。

――さらに「もんじゅ」を核に「エネルギー研究開発拠点化構想」で新たな船出をされましたね。

河瀬 「研究開発拠点化構想」は、福井県が一丸となり情熱を傾けて取り組んでおり、一足飛びには行かないが着実に進展している。敦賀市では既存の原子力発電所に加え、さらに、「もんじゅ」の展望が開けたことから、まだ技術開発途上のFBR研究開発拠点として、国内外の最先端研究者の集積地となり、素晴しい新技術を世界中に発信していけるよう期待したい。

私は、全国原子力発電所所在市町村協議会会長として、常に「原子力があってよかったね」と言われるような地域づくりの支援を国にお願いしている。ただ、「安全」に問題があれば全て一瞬のうちに水泡に帰すだけに、関係者の方々には最大限の注意を忘れないようお願いしたい。

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[略歴]日本大学商学部卒、敦賀市議会議員、福井県議会議員を経て、1995年4月から現職。全国原子力所在市町村協議会会長等、公職多数。


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