[原子力産業新聞] 2006年12月14日 第2360号 <6面>

被ばく後治療薬の可能性 ラクトフェリンに効果 放医研等が確認

放射線医学総合研究所の基盤技術センター、石巻専修大学の理工学部生物生産工学科、韓国水力原子力(株)保健研究院はこのほど共同で、母乳などに含まれるラクトフェリンに放射線障害を防護する顕著な効果があることを確認した。放射線被ばく後に投与しても効果を示す治療薬になる可能性がある。

研究グループは、マウスに6.8GyのX線を全身照射し、ラクトフェリンを与えたラクトフェリン投与群と与えないコントロール群を1か月間飼育、生存率を観察した。その結果、コントロール群の生存率は62%であったが、投与群は85%を示した。

ラクトフェリンが放射線防護作用を示すメカニズムは解明されていないが、X線照射により体内に発生する活性酸素やフリーラジカルから細胞を防護する効果があると想定する。研究グループは、ラクトフェリンを坑放射線被ばく薬剤として活用するため、今後この機能の解明に注力する。

現在の放射線防護剤は、被ばく前投与で予防的な効果を示すもので、被ばく後の投与でも有効な効果が得られる薬剤の開発が望まれている。


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