[原子力産業新聞] 2007年1月5日 第2361号 <4面>

年頭所感 甘利 明 経済産業大臣 エネ・環境に積極政策

平成19年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

昨年発足した安倍内閣において経済産業大臣を拝命いたしました。私は与党の責任者の立場においてそれまでもライフワークとして経済産業政策に携わってきましたが、就任以来、国内においては、国際的イコールフッティングを確保し、最先端設備の導入を促進するための減価償却制度の抜本的見直しや、中小同族会社の留保金課税の撤廃など成長力強化のための税制改正などに尽力してまいりました。

 

また、19年度予算要求における3,000億円規模の経済成長戦略要望のとりまとめ、減少が続いてきた中小企業対策予算の反転増加の実現を始めとする地域・中小企業の活性化策の推進、製品安全対策の飛躍的な強化等様々な問題に積極的に取り組みました。

対外的にはAPEC閣僚会議や5ヵ国エネルギー大臣会合などに出席するとともに、「東アジアEPA」の構築等について各国の代表と会談を重ねるなど、アジア各国との協力関係構築を始め戦略的な通商政策の展開に邁進してまいりました。

本年も、内外に諸課題が山積しておりますが、経済全般と通商政策を担当する閣僚として、国民の皆様の声に耳を傾けながら、長年に亘り経済産業分野で培ってきた私の経験と知識を総動員して、引き続き全力で取り組んでまいります。

今、日本経済は、総じて見れば、設備投資、外需主導の息の長い経済回復を続けています。しかしながら、企業規模別、地域別に見ると回復の動きにはばらつきが見られ、景気回復を多くの国民が実感できずにいます。日本経済を支える企業収益が増加する中で、本年はこのような企業部門の好調を家計部門における力強い消費に波及させることにより、消費と企業部門がバランス良く主導する景気回復を実現することが必要です。息の長い安定した経済成長のためには、雇用者の報酬の増加を通じて消費が増え、これが企業の収益の増加につながる「家計と企業の所得の好循環」を生み出すことが重要であり、この点は是非日本の産業界のリーダー・経営者の方々にも思いをはせていただきたいと考えます。

さらに中長期的には人口の減少、巨額の財政赤字、国際競争の激化など、構造的な対応が迫られる課題を数多く抱えております。こうした状況において、中長期的に安定した社会保障などの様々な政策の原資となる「富」を生み出すための経済産業政策こそ、まさに政策の中の政策であると考えています。そして、財政再建の途上にあり、財政出動における制約の大きい今こそ、「アイデア官庁」としての経済産業省の出番です。人口減少等の構造的課題を克服し、民主導での力強い成長を実現する新たな日本型成長モデルを実現するため、昨年7月にとりまとめられた「経済成長戦略大綱」の施策を一層充実・強化して実行するとともに、新しい政策の検討を進めます。

天然資源の少ない我が国としては、エネルギー・環境政策に積極的に取り組むことが不可欠です。エネルギーを巡る国際情勢は、昨今大きく変化しております。中国やインドを始めとする世界的なエネルギー需要の増大やOPEC加盟各国の生産余力の低下などにより、エネルギー需給の逼迫が懸念されています。こうした中で、経済産業省としては、省エネルギー・新エネルギーの推進、バイオエタノールの導入促進を含む運輸エネルギーの次世代化、石油自主開発の推進等による資源の安定供給の確保、安全の確保を大前提とした核燃料サイクルを含む原子力発電の推進など、総合的なエネルギー政策に取り組んでまいります。

また、世界最高水準にある我が国の環境・エネルギー技術を活用して中国を始めとするアジアへの省エネ・環境対策協力を推進し、世界全体でのエネルギー問題の解決に貢献する考えです。

地球環境問題もますます重要な課題となってきております。地球環境問題への的確な対応を図るため、「京都議定書目標達成計画」に沿った施策を総合的に講じ、目標達成に向けて最大限努力いたします。

また、我が国及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威である北朝鮮に対して、経済制裁を厳格に実施し、誠実な対応を促します。

本年においても、経済成長を一層持続的なものとするために、将来を見据える視点と今まで以上のスピード感をもって、これらの課題に取り組んでまいりたいと考えております。皆様のより一層の御理解と御支援を賜りますよう何卒お願い申し上げます。

最後になりましたが、皆様の御多幸と御健康を心から祈念いたしまして、私の新年のごあいさつとさせていただきます。


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