[原子力産業新聞] 2007年1月5日 第2361号 <4面>

年頭所感 高市 早苗 内閣府特命担当大臣(科学技術政策、イノベーション) 政府一体で原子力に取り組む

新年明けましておめでとうございます。

21世紀も7年目に突入し、我が国は人口減少時代という新たな局面を迎えています。このような状況の中、我が国が十分に力強く成長し、一人一人が豊かで安全・安心な生活を享受するとともに、世界の諸課題の解決に貢献していくためには、我が国に新たな活力をもたらすイノベーションの創造と、これを支える科学技術力の強化が必要です。

第3期科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)では、科学技術への戦略的な投資とその成果の社会・国民への還元に向けて、基礎研究を推進するとともに、政策課題対応型の研究開発において一層の選択と集中に取り組むこととしており、本年も引き続き、これらの実現を念頭に、多様な政策目標に向けた施策に取り組んでいく所存です。

特に、原子力については、資源の乏しい我が国にとって貴重なエネルギー源であり、また、医療分野をはじめ様々な場面で活用され、経済・社会的発展や国民生活の向上に大きく寄与しています。

このような状況を踏まえ、我が国は原子力政策大綱に基づき、原子力の研究開発利用を進めています。特に原子力のエネルギー利用は、エネルギー安定供給の確保及び地球温暖化問題への対応の観点から国内外で再評価されています。

我が国は、2030年以降も、総発電量の30〜40%以上を担う基幹電源として原子力発電を位置付け、さらに、プルトニウム、ウランを有効利用するため、使用済燃料の再処理やプルサーマルなどの核燃料サイクルを着実に推進することを基本方針としています。

原子力技術は、エネルギーの安定供給に貢献し、環境と経済の両立を図ることができる、実証された技術です。第3期基本計画の「分野別推進戦略(平成18年3月総合科学技術会議決定)」でも、我が国の独自技術を保有することを目指した研究開発を推進する重要性が高い技術として、戦略的、重点的に推進することとしています。

特に、消費する量より多くの核燃料を生み出す高速増殖炉とそのサイクル技術は、第3期基本計画の中で、我が国の存立の基盤として国家が主体的に取り組む国家基幹技術として位置付けられています。昨年12月に原子力委員会が「高速増殖炉サイクル技術の今後10年程度の間における研究開発に関する基本方針」を決定したことを踏まえ、原子力政策大綱が示す2050年頃からの商業ベースでの導入を目指した政府全体の取組が、今年からさらに本格化していくでしょう。

原子力の放射線利用につきましても、昨年10月には、食品への放射線照射について原子力委員会が報告書をまとめ、有用性が認められる食品(まずは香辛料)への照射に関する検討・評価を関係行政機関が行うことが必要との見解を示しました。放射線利用は学術、工業、農業、医療等の分野で重要な役割を果たしており、国民の皆様の利益となるよう引き続き研究開発を推進してまいります。

これら原子力の研究開発利用は、厳に平和の目的に限られ、かつ安全の確保が大前提であることは言うまでもありません。昨年の北朝鮮の核実験のように、原子力を用いて国際社会に脅威を与えることは許されないことであり、我が国は今後も様々な国際会議の場等を通じて、国内外に向け平和利用について発信していく所存です。

また、安全の確保については、耐震安全性の確保、高経年化対策、再処理施設の安全性確保など重要な課題が多くある中で、事業者においても規制当局においても、原子力施設の安全性について国民の信頼を得られるよう、緊張感を持って取組を継続していくことが求められていると思います。今後とも、原子力安全委員会の機能を最大限に活用し、安全の確保に万全を期してまいります。

もちろん、原子力の研究開発利用の円滑な実施のためには、国民の信頼が不可欠です。広聴・広報活動や学習機会の充実等を図り、国民との相互理解が深まるよう努めていかなければなりません。

本年も政府一体となって原子力の研究開発利用に取り組んでまいる所存ですが、その活動に当たっては、これまでも、そして今後も皆様のお力が不可欠です。我が国の発展と世界において我が国が価値ある存在となることを目指し、皆様とともに努力してまいりたいと思います。

皆様の一層のご活躍とご多幸をお祈りいたしまして新年のご挨拶といたします。


Copyright (C) 2007 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.