[原子力産業新聞] 2007年1月18日 第2363号 <6面>

欧州委 EU共通のエネ政策を発表 20年までにCO排出量を20%削減

欧州委員会は10日、欧州連合(EU)共通のエネルギー政策案を発表。EU加盟国全体の温室効果ガス排出量を、2020年までに1990年比20%削減すると明記した意欲的な温暖化対策を打ち出した。欧州委員会はこれを、低炭素経済社会への移行を実現するための「新たな産業革命」と位置づけ、加盟各国の承認を求めている。

原子力発電に関して欧州委員会は、EU全体で総発電電力量の30%を占めており、経済性も高く、燃料供給も安定していると指摘。また温室効果ガス排出量の削減に多大に寄与している電源であるとし、将来の排出権取引制度を検討する上で重要な役割を果たすとした。そして、原子力発電の是非を決めるのはEU加盟各国の主権であるとしながらも、ドイツなど脱原子力政策を実施する国は、その分を他の低炭素エネルギー源によって補う必要があるとの考えを示した。

そして原子力発電所の新規建設や運転期間延長に加え、新エネルギー分野の研究開発強化、エネルギー効率を2020年までに20%向上させること、風力など再生可能エネルギーのシェアを2020年までに20%に拡大させること、などを明記している。

また欧州委員会はエネルギー安全保障も重視しており、特にロシアからの天然ガス・石油の輸入量を低減することをねらっている。そのためEU域内(電力・ガス)エネルギー市場を完全に統合し、競争力を強化。域内エネルギー部門への投資を奨励し、エネルギー安全保障の確保を図る施策を打ち出した。

具体的には、独Eon社、独RWE社、仏電力公社(EDF)など巨大電力会社の発電部門と送電部門の完全な分離を提案した。現行法ではすでに発送電部門の法的な分離を規定しているが、欧州委員会は「電力会社は送電部門を子会社化しただけで何も変わっていない」(N.クルース競争政策担当委員)と指摘し、市場統合に向けてさらなる規制が必要としている。

また、各国間の国際連携線や天然ガス・パイプラインへの投資を加速するため、主要連携線やパイプラインの建設プロジェクトのEUによる調整や、系統運用者間の協力緊密化、各国の許認可手続きの合理化などの施策を提案した。

EU加盟27か国は、3月に開催される欧州理事会(EU首脳会議)でエネルギー政策案の批准を審議する。しかし、特に発送電部門の完全分離など競争分野での記述に関してドイツとフランスが強硬に反発しており、紛糾が予想されている。

なお京都議定書では、EUの温室効果ガス排出量削減目標は、2012年までに1990年比8%削減と設定されている。


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