[原子力産業新聞] 2007年1月25日 第2364号 <3面>

ドイツ銀行 レポートを発表 脱原子力政策に警鐘

ドイツの脱原子力政策は、CO排出量削減目標の達成を不可能にするだけでなく、電力価格の高騰、停電の頻発、ロシアへの天然ガス依存度の劇的な増大をもたらす――。

ドイツ銀行が19日に発表したレポートはこのように警告し、前政権の脱原子力政策を頑なに堅持するA.メルケル首相を厳しく批判した。

レポートは、国内電力需要の増大や老朽化した火力発電設備の代替のため、2022年までに計4,200万kWの新規発電設備容量が必要になると予測。現行の脱原子力政策のままでは、環境影響の大きい褐炭火力や石炭火力には頼れず、ガス火力に依存せざるを得ないとし、2010年〜2020年に電力部門のCO排出量は16%増、天然ガスのロシアへの供給依存度は現在の35%から50%に拡大すると指摘した。

S.ガブリエル環境相は、ドイツの2020年の排出削減目標を1990年比40%に設定しているが、ドイツ銀行は「産業・運輸部門の排出削減目標が達成されたとしても、原子力なしでは1990年比31%削減が精一杯」と分析している。

そしてレポートは、「原子力発電所を強制閉鎖することはまともな政策とは言えない」と強調。代替政策として、脱原子力政策によって送電開始から32年と設定されている原子力発電所の通常運転期間(運転停止期間は除く)を60年に延長することを提案した。

そして、その上で原子力発電所に特別税を課し、税収入を石炭火力等のクリーン化に寄与するCO回収・固定技術の研究開発に再投資するよう提言している。


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