[原子力産業新聞] 2007年2月1日 第2365号 <2面>

インタビュー 「FBRサイクル」時代へ先導 原子力機構理事長 岡ア 俊雄氏

――日本原子力研究開発機構(原子力機構)は放射線利用や核融合等を含む原子力分野全体の研究開発機関だが、今年は「核燃料サイクル」幕開けの年だけに、そこに焦点を当ててください。

岡ア 原子力機構誕生から1年3か月、殿塚前理事長のリーダーシップの下に、いい形でスタートできた。この間、エネルギー安定供給や、地球環境問題から改めて原子力の果たす役割・責任の重みが増し、原子力に対する世界の認識がポジティブになったことを背景に、世界は今、原子力ルネサンス・原子力の新しい時代を迎えようとしている。

年明けに、いよいよ今年操業開始予定の六ヶ所再処理工場を訪問したが、何にも増して、使用済燃料再処理・プルサーマル利用を中心とした「軽水炉サイクル」確立の大事な一歩となるだけに、原子力機構もできる限り協力・貢献していきたい。

ただ、その先に原子力エネルギー利用の究極である「FBRサイクル」があり、その実用化が原子力政策大綱、原子力立国計画で明確に打ち出され、さらに第3期科学技術基本計画でも、FBRサイクル技術が国家基幹技術として国の存続にかかわる重要な技術課題の1つに位置づけられた。この「軽水炉サイクル」から「FBRサイクル」への円滑な移行、実現に向け、原子力機構が中心的役割を担っていく。

――「FBRサイクル」具体化へのポイント、展望について聞きたい。

岡ア ポイントの1つは、事故で10年以上停止したままになっているFBR原型炉「もんじゅ」の運転を再開し、プラントとして、またナトリウム取扱技術をきちんと確立、社会に提示して信頼、支持を得ることにある。幸い、改造工事に一昨年着手した後も順調に推移しており、安全第一に細心の注意を払いながら来年には運転再開にこぎつけたい。同時に、これまで電力会社、メーカーと協力して実用化戦略調査研究を進めてきたが、いよいよ今年から実用化を目指した技術開発フェーズに入る。

その目標は、2050年予定を少し前倒し、FBRシステムを商業ベースで導入することにある。それには25年には実証施設を建設する必要があり、それに向けて実用化技術を確立していくことが、今後5〜10年間、原子力機構に与えられた最大の任務だ。昨年暮には、「高速増殖炉サイクル実証プロセスへの円滑移行に関する五者協議会」の場で、われわれ研究開発機関のみでなく、実際に現場を担うメーカーについて、実用化に確実につなげていってもらう観点から、中核メーカーを育て、そこに成果を集約して責任ある体制を築く方針を固めた。今はそのための中核メーカーの選定について、準備を進めている。それには、電力、メーカーおよび経産省、文科省が一体となり、日本の総力を結集しないとFBR技術は成就できないぐらいの覚悟が必要で、原子力機構はその中心的役割を果たしていく。

わが国が50年前に原子力基本法を制定、原子力平和利用の研究開発に着手した当時は、正に産学官挙げて一体となり、熱意を持ってスタートした。それが年の経過とともにその意識が弱まり、相互に距離ができたのは反省点だ。今回、改めて核燃料サイクル新時代を迎えるにあたり、もう一度再結集して、国を挙げて取り組む体制が大事。国際的な開発競争を考えれば、産学官連携なくして日本の原子力利用技術の将来はない。それだけに、日本原子力産業協会にはぜひ産学官連携の要になってほしい。

――FBRサイクル開発の国際的取り組み、世界のCOEとして原子力機構の役割はどうか。

岡ア FBRサイクル開発はわが国だけでなく、ここ2、3年、国際協力プロジェクトとして浮上、第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF)はその代表例でFBR開発が中心。そのGIFの中心的メンバー国の1つであるフランスは昨年、FBR開発推進政策を発表、また、30年近くも再処理、FBR開発を放棄していた米国も、改めてGNEP(国際原子力エネルギー・パートナーシップ)構想という形で回帰策を鮮明に打ち出した。われわれが目指す将来のFBR体系と、こうした国際的議論の方向は極めて一致しており、米、仏と協力しながら、日本がこれまで蓄積した技術、経験を基に国際的原子力開発を先導し、貢献していく役割、責務があるとの意識で取り組んでいくのが1つの大事な視点である。

また、開発目標の方向性が一致していることに加えて、FBR実用化技術開発は巨額の資金と人材を必要とするだけに、できるだけ国際協力し、資金分担していくことが日本にとっても研究開発の効率化につながる。したがって、GNEPには積極的に参加、協力していく考えだ。

(原子力ジャーナリスト 中 英昌)

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[略歴] 66年大阪大学工学部原子力工学科卒、旧科学技術庁入庁、原子力局長、事務次官。日本原子力研究所理事長、日本原子力研究開発機構副理事長、07年1月1日から理事長。


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