[原子力産業新聞] 2007年2月1日 第2365号 <4面>

原子力機構 ITER用技術を続々開発 高プラズマ圧力化やブランケット製造

日本原子力研究開発機構はこのほどJT−60(=写真)を用い、ITERで想定されている約1.6倍のプラズマ圧力を、従来予測より遙かに小さいプラズマ回転速度で安定に保持できることを発見した。ITERの高出力運転を可能にする技術となる。

核融合出力はプラズマ圧力の2乗に比例し、小型で高出力の核融合炉の実現には、プラズマ圧力を高める必要がある。しかし、高圧力によりプラズマが変形するという課題がある。このため高速中性粒子ビームの入射によりプラズマを回転させ、変形を防ぐことが検討されている。

JT−60は、その回転速度を自在にできるよう入射方向が異なる中性粒子ビームを装備。一昨年の閉じ込め磁場形状の改良により、実効的な加熱パワーも増大した。今回、これらにより将来の核融合炉に類似した条件の再現に成功。その結果、他装置で予測されていた値に対し、わずか15%(秒速約20km)のプラズマ回転速度で、ITERの主要目標である燃焼プラズマの長時間維持(標準運転)に必要とされる約1.6倍のプラズマ圧力を安定に維持できることを示した。

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日本原子力研究開発機構は、国際熱核融合実験炉(ITER)用ブランケットの第1壁を製作する技術を世界に先駆けて開発した。

第1壁は2枚の低放射化フェライト鋼薄板で同素材の矩形冷却管を挟み、プラズマに面する薄板側には保護材のベリリウムを貼付けた構造。機構では今回、熱間等方圧加圧接合(HIP)法を用い、母材並みという高い強度で、これらを接合した。

HIPは拡散接合の一種で、部品をぴったり合わせてカバーを付け、これを1,040度C・1,500気圧の釜に入れ、合わせた面で原子を交じり合わせることにより接合する。低放射化フェライト鋼同士の接合は川崎重工業、同鋼とベリリウムは日本ガイシの協力を得て、接合条件を最適化した。

ブランケットは、炉心プラズマで発生する中性子を利用し熱の取出しあるいは燃料となるトリチウムの増殖を行う重要な機器。内部は冷却水を流す配管とこの増殖のためのリチウム化合物やベリリウムの微小球を詰めた充填構造になっている。

ITER参加各極はこの製作技術で開発競争を展開しており、今回の成果は日本の技術の優位性を示した。


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