[原子力産業新聞] 2007年2月15日 第2367号 <2面>

名古屋で地層処分シンポ開く 東洋町の応募でも意見交換

経済産業省は2月9日、名古屋市中区のアスナルホールで「放射性廃棄物地層処分シンポジウム2007in中部」を開催した。中日新聞社との共催で、高知県東洋町が文献調査地点に名乗りを上げてから、最初のシンポジウムには約300名が参加した。

当日は第1部で地層処分の概要と必要性、安全性と研究開発、最終処分施設の立地と地域共生などの説明があったあと、第2部で飯尾歩・中日新聞論説委員をコーディネーターにパネル討論を行った。

地層処分の安全性と研究開発について、清水和彦・原子力機構研究主席は、カナダのシガーレイク鉱山では約13億年前に形成されたウラン鉱床が周りの粘土層に囲まれてほとんど移動していないことを紹介し、人間が人工的に行う研究には限度があるものの、自然界での類似の例を研究することによって、適切な処分環境を選べば放射性廃棄物を安全に長期にわたって隔離しておくことが可能であることが分かる、と強調。研究者たちは地層処分の安全性には絶大の自信を持っている、と強調した。

それでも川ア千晴・消費生活専門相談員が、一部の国では処分サイトは決まっていても「処分の実施には前例がなく安全性が不安」と述べたのに対し、吉田英一・名古屋大学博物館助教授は、「人間は行っていないが、自然が行ってくれている」と述べ、20億年前のアフリカ・ガボンでの天然原子炉での核分裂について説明し、その周辺の岩石を調べることで、ある程度の放射性廃棄物の挙動を理解できるとした。

さらに二口政信・原子力発電環境整備機構立地広報部長は、「人間はミスを犯すという前提で、安全性を確保している」と述べた。

山田厚志・山田組社長(環境共生まちづくりの会代表)は「プロの権威がなくなった社会になってしまった。市民は権威と信頼を寄せるべきで、一方で技術者は組織に縛られすぎずに、一人の人間としても考えてほしい」と訴えた。

今回の東洋町の件について、名古屋市で一般ゴミの対策を推進した神下豊・市環境都市推進部長は、「名古屋市ではゴミの減量などのために町会単位で2,300回の説明会を行った。東洋町での説明会は数回と聞くが、少なくとも桁を上げて、顔を見ながら説明しないと理解してもらえないのではないか」と述べた。

主催者側の吉野恭司・放射性廃棄物等対策室長は、文献調査地点の全国公募について、「公募4年余り応募地点が出てこなかった。当初はいくつかは出てくるものと思っていた」と認めながらも、新年度から年10億円(2年間)の地域対策交付金の拡充は必要な措置と説明する一方、立地地点だけでなく名古屋市のような電力消費地の理解も不可欠と付け加えた。

同シンポは昨年3月の東京を皮切りに、福岡、高松、広島、大阪などで開催してきており、地元新聞社などと共催するのが特徴で、後日、特集記事などとして掲載される。今回は21日の朝刊の予定。


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