[原子力産業新聞] 2007年3月1日 第2369号 <4面>

高校生が考える原子力 「2030年のエネルギーの姿」を描く 指導教諭によるディスカッションも行われる

高校生を中心とした原子力・エネルギーに関する学習成果を報告し合う交流シンポジウム「未来の世代が考える、2030年の日本の原子力・エネルギーの姿」(文部科学省主催)が2月11日、東京大学ホールで開かれ、原子力立地県と電力大消費地の計7校が、地域の特色がにじみ出たエネルギー将来像を披露した。高校生たちによる発表に続き、各校指導教諭による公開ディスカッションも行われた。

今回は、原子力立地県から茨城工業高専(茨城)、敦賀高校(福井)、一宮高校(岡山)、電力大消費地から神奈川大学附属中・高校(神奈川)、犬山南高校(愛知)、摂陵中・高校(大阪)の計6校が学習成果を発表したほか、特別枠として、日本原子力研究開発機構の協力による人形峠ウラン鉱発見50周年の取組で、津山高校(岡山)が地元を中心とした理解促進活動について報告した。

開催に当たり、阿部真明・文科省研究開発局立地地域対策室長は、世界的なエネルギー消費の増加傾向から、「2030年、石油資源の限界は今以上にはっきりしている」と述べ、将来のエネルギー問題を、自身の問題として考えることを高校生たちに期待した。

参加校での指導に当たった小佐古敏荘・東大教授は、穀類の燃料利用と家畜の飼料不足、太陽光電池と耕作地の日照影響の関係などを例にあげ、これらに介在する「量の概念」の脱落に、現代教育の一問題を指摘するとともに、エネルギー・原子力に視点を据えた、総合的な学習が学校で展開されることを求めた。

犬山南高の発表では、地球温暖化に着目し、原子力発電電力量が現在の2倍、さらに、クリーンエネルギー車の普及も加えた場合で、30年時点の国内年間CO排出量を、約4億トン減の約8億トンと試算し、CO削減に向け、原子力発電の理解、省エネを身近なところから呼びかける必要を訴えた。

ディスカッションに移り、自らも長く地元の線量測定を行っている松沢孝男・茨城工業高専教諭は、放射線の実践教育を行っている学校が県内にほとんどない実情を立地地域の教員として指摘した。これに対し、中山智恵子・神奈川大附属中高校教諭は「教員、生徒ともに多忙な中、時間を作り出すのが難しい」、塚平恒雄・摂陵中高校教諭は「社会科、理科とで教員間で意見の違いが」などと、原子力・エネルギー教育を進める上での困難を訴えた。


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