[原子力産業新聞] 2007年3月8日 第2370号 <1面>

地層処分 研究成果で報告会 「発電と廃棄物はセット」

資源エネルギー庁と日本原子力研究開発機構は5日、「地層処分計画を支える技術基盤の継続的な強化――国の地層処分基盤研究開発の成果と今後の展開」と題する報告会を東京・神田駿河台の全電通ホールで開催し、約230人の専門家らが参加した。

まず資源エネ庁の吉野恭司・放射性廃棄物等対策室長が「地層処分基盤研究開発に係る調整会議の枠組みと全体基本戦略」について発表、次いで高レベル放射性廃棄物、TRU廃棄物などの各研究開発の現状などが報告された。

報告会の最後には、杤山修・東北大学多元物質科学研究所教授を座長にパネル総合討論「地層処分基盤研究開発への期待」が行われた。

杤山座長は、放射性廃棄物の問題は原子力発電と「セットの選択」と考えるべきで、よりよいエネルギー資源の確保と環境負荷の低減が必要で、放射性廃棄物の処理処分は社会的安全の確保が重要だ、とした。また自由主義経済の下では資源や製品の価格は調達に要した経費、努力が反映されたものとなるが、社会的安全確保や廃棄物の処理処分などは利益事業に直結しないため、特に社会的費用(環境費用)の認識が重要だと指摘した。

大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの八木絵香・特任講師は、専門家の説明と地域住民の質問内容を考えるとき、そこに横たわるものは「本当に安全性の問題なのか?」と問いかけ、住民が「それなりに安全なのかも知れないが」と一応の理解を示したとしても、本音の議論として、@立地されると安全問題以外にどのようなことが起こるのかA調査の途中で本当に引き返せるのかというある種の不安感B経済効果があるとしても、それで幸せなのか――との問いに、どのように答えるのかが問われる、と述べた。また、単に安全かどうかというよりは、「万が一の場合にどう担保されるのか」との問いに答えることが重要なのではないか、と指摘した。

吉野エネ庁室長は、住民との話し合いでは「技術が確立していないのではないか」と言われるし、この週末にはテレビのコメンテーターから「情報開示が足りない」との指摘もあり、「我々は相当努力しているつもりだが、まだまだ伝わらないことも多い」と述懐した。


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