[原子力産業新聞] 2007年3月8日 第2370号 <2面>

安全委 新耐震指針でシンポ開く 基準地震動の高度化など説明

原子力安全委員会主催シンポジウム「改訂された耐震設計審査指針と今後の取組」が4日、虎ノ門パストラル(東京・港区)で約300人の来場者のもとに開催、耐震指針改訂の経緯、それに伴う行政庁、事業者の取組を紹介するとともに、改訂審議に関わった分科会委員らによるパネル討論も行われた。

約5年にわたる調査審議の末、昨秋に決定した新耐震指針の概要について、名雪哲夫・安全委事務局審査指針課長が説明、「地震動の評価・策定方法の高度化」「耐震安全に係わる重要度分類の見直し等」「確率論的安全評価手法活用に向けた取組」を主なポイントとして示した。指針改訂を受けた対応については、森山善範・経済産業省原子力安全・保安院原子力発電安全審査課長と中矢隆夫・文部科学省原子力安全課保安管理企画官が、それぞれ既設の発電用原子炉、試験研究炉の耐震安全評価を中心に、所管原子力施設に対する規制行政サイドの取組を説明した。

一方、事業者側は、森下日出喜・東京電力原子力技術・品質安全部建築マネージャーが、新耐震指針の実質的適用となる東通1号機設置許可の新規申請を国に行ったことを先ずあげたほか、同社既設の3発電所17プラントの新指針に照らした耐震安全性評価について、発電所ごとに2〜3年程度かけて実施していく工程を示した上、今年度内の地質調査完了に向けて、起振車による地下探査などに取り組んでいることを紹介した。

新指針の技術的ポイントについては、活断層の定義が大議論となったことを振り返り、指針改訂審議に関わった佃榮吉・産業技術総合研究所研究コーディネーターが、最近の活断層の掘削調査、反射法探査の事例をあげ、翠川三郎・東京工業大学総合理工学研究科教授が、断層モデルと模擬地震動によるシミュレーション解析を紹介するなど、新指針の基準地震動策定関係での高度化を説明した。

コメンテーターとして登壇した井川陽次郎・読売新聞論説委員は、改訂指針に対し定期的に意見を反映させていく仕組みを求めたが、鈴木篤之・安全委員長は、「指針である以上あまり頻繁に改訂するものではない」とし、実際の安全審査に際して個々の問題について加味していくことが現実的と述べた。

また、調査審議過程で多くの時間を要した「残余のリスク」の具体的基準については、今後の既設炉バックチェックのプロセスで評価していき、その説明方法も「国民と一緒に考えていく」姿勢を鈴木委員長は示した。

また、来場者からは、「大地震で多数の家屋倒壊、負傷者が生じているとき、通常の原子力防災対応が果たして可能か」といったいわゆる「原発震災」を心配する声も出された。


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