[原子力産業新聞] 2007年3月22日 第2372号 <1面>

安全委と原子力委 志賀事故隠ぺい等で見解 「安全確保の基本から逸脱」

電気事業者による事故の隠ぺいやデータ改ざんを受け、原子力安全委員会と原子力委員会は19日、それぞれ見解を取りまとめた。特に、北陸電力・志賀1号機の臨界事故に対する同社の対応について、「原因を究明、対策を講じ、得られた教訓を共有するという安全確保の基本から逸脱し誠に遺憾」(安全委)、「安全確保に関する知恵の充実に参加することを拒否する行為」(原子力委)と厳しく指摘した。(2面に原産協会会長コメント)

安全委員会は北陸電力の原子炉臨界事故の隠ぺいを、事故の原因究明や対策、得られた教訓の共有という安全確保の基本から逸脱したもので、「誠に遺憾」とし、再発防止に向け、事実関係・発生原因を包括・具体的に解明、意味・重要度を詳細に評価すべきと訴えた。

19日の安全委員会会合(=写真)で、臨界事象に関する保安院からの報告を受け、各委員より、停止期間中の防護対策、原子炉主任技術者の責務などに関する発言があったのに続き、鈴木篤之委員長が同委員会としての見解と自身のコメントを示した。同委員長は、今回の隠ぺいを「言語道断の悪質な行為」と厳しく非難した上で、同社に対し「猛省の上で失った信頼を取り戻すよう」強く求めた。また「安全文化の喪失の観点から誠に残念」と述べたほか、実体的安全と手続き的安全の二面をあげ、従事者に後者へのマイナス意識を与えぬよう規制行政庁、経営トップも配慮するよう言及。今後、安全確保の充実・強化に向けIT技術、PSA手法活用について、安全委で検討していく考えも示した。

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原子力委員会は19日、臨時会議を開き見解を取りまとめた。

「こうした事態の発生の隠ぺいは、過誤や異常を経験するごとに教訓を集積してきた現在の安全確保について、その継続した充実に参加することを拒否する行為」と強調。「この事実が今日まで見出されなかったことは、原子力発電所の安全確保のためのシステムに対する国民の信頼を揺るがすものであり、このことを原子力委員会は深刻に受け止める」としている。

また、国民から信頼されるためには第1に、経営者が安全最優先の経営方針を組織の隅々にまで浸透させること、第2に品質マネジメントを機能させ異常事象等が発生した際には根本原因分析により抜本的な対策を講じること、第3にこうした取組みについて国民や地域社会への説明責任を十分に果たすこと、であると強調した。

同委員会はこの見解を原子力白書に添付して閣議報告した。


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