[原子力産業新聞] 2007年3月22日 第2372号 <1面>

原子力白書 原子力委が06年版を閣議報告 「原子力新時代を迎える世界」

原子力委員会はこのほど06年版の原子力白書を取りまとめ、20日の閣議に報告した。最近の動静を分析し、同委員会として問題意識を示す第1部・第1章のテーマは「原子力新時代を迎える世界〜原子力発電の拡大と核不拡散の両立に向けて〜」。世界的な原子力発電拡大や核不拡散強化の新たな動きを解説するとともに、我が国が取組むべき課題として、高レベル放射性廃棄物処分場立地に関する社会的合意形成、人材の育成、核不拡散体制強化に向けた国際社会への働きかけ、アジア諸国への協力支援などを挙げた。

第1章は、@激動する世界のエネルギー情勢と地球温暖化問題A世界に広がる原子力発電の拡大の流れB世界における核不拡散の強化に向けた新たな動きC原子力新時代の到来に向けて我が国が取組むべき課題――の4節で構成する。

エネルギー情勢と地球温暖化問題では、世界のエネルギー需要が増大する中で、改めて「原子力発電はエネルギー問題と地球温暖化問題の解決に貢献する中核的手段の一つになりうる」とした。原子力発電拡大では、先進諸国を中心に燃料サイクル関連事業や放射性廃棄物処分の推進の動きを紹介、各国間の国際協力や原子力産業の合従連衡の動きも示した。核不拡散の強化では、平和的利用との両立を目指す各国の燃料供給に関する提案などを紹介した。

我が国が正面から取組むべき課題は、利用の高度化に向けた体制の整備・充実、国際社会への積極的働きかけ、アジア諸国への対応、研究開発の推進の4項目。体制の整備では、最終処分場立地の社会的合意形成の重要性、世界をリードできる人材の育成、電気事業者の品質マネジメントの充実、原子力防護対策の充実、科学的・合理的な安全規制体制の整備などを挙げた。

原子力発電の導入・拡大を目指すアジア諸国へは、知的基盤やインフラ整備活動を支援するとともに、原子力をクリーン開発メカニズム(CDM)の対象に含めるなど、我が国産業の機器等の輸出促進のための貿易・金融関連制度の充実が重要であるとした。インドとの協力では国際的な核軍縮、核不拡散体制への影響を注意深く見ながら戦略的関係の重要性を認識し、検討すべきとした。


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