[原子力産業新聞] 2007年3月29日 第2373号 <1面>

東京電力 福一3でも発生公表 28年前にも臨界状態

北陸電力・志賀1号機の臨界発生の15日の発表を受け、また原子力安全・保安院からの指示に基づいて、過去に制御棒が想定外に引き抜けた事象などの有無を調査してきた東京電力は22日、78年11月2日に定期検査中だった福島第一原子力発電所3号機(BWR、78万4,000kW)で、制御棒が5本途中まで引き抜けて、最長7時間半にわたって臨界状態になっていた可能性がある、と発表した。現在も詳細調査中だが、ことが重大と判断して緊急発表した。

福島第一3号機は、2回目の定期検査中に、原子炉圧力容器の水圧試験を行うため、制御棒駆動水圧系の水圧制御ユニットの隔離作業において、制御棒5本が想定外に引き抜け、原子炉が部分的に臨界になっていた可能性が高い。

28年以上前のことで、東京電力には運転日誌以外にはほとんど記録が残っておらず、運転日誌には想定外の臨界状態などのことは記載されていなかった、という。

同社が古い記録の調査や社員からの聞き取り調査を行っていたところ、この時期の後、同作業の操作手順を変更したという記憶のある人がおり、OBまで聞き取り範囲を広げて調査したところ、その当時は当直副長で3号機の直接の責任者だった人から、「朝出社したら夜勤だった担当者から制御棒が抜けているとの報告を受け、自分が制御棒を挿入するよう指示した」との証言が得られたため、メーカーにも調査協力を依頼した。

その結果、東芝の関係者から21日夜に連絡があり、業務上の手書きのメモが存在することが明らかとなった。それによると、原子炉内の中性子数を計測する一番レベルの低い測定モニター(SRM)の針がスケールいっぱいまで振り切れていたという。臨界状態の継続時間は最長で、駆動水圧系のバルブ操作開始から、当直副長による制御棒挿入指示・実行までの、午前3時ごろから10時半ごろまでと推定されている。圧力容器の水圧試験はそのまま行われたものとみられる。

BWRは圧力容器の下から制御棒(総数137本、長さ3.6m)が挿入される構造になっており、今回5本の引き抜けの程度も上部から25%〜8%と幅があり、全出したものはなかった。


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