[原子力産業新聞] 2007年3月29日 第2373号 <2面>

地方からのレポート 番外編 中国地域エネルギーフォーラム 人とのつながり最大活用

日本原子力産業協会はその地方組織とは別に、各地域で独自にエネルギーや環境問題の理解促進活動に取り組んでいるいくつかの関連組織と緩やかなネットワークを構築している。今回はそれらの組織に焦点を当て、地道だが地域に根付いた特徴ある活動について、シリーズで紹介する。

第1回目は、広島市に本部をもち中国地域5県を対象とする中国地域エネルギーフォーラム(会長=宇田誠・広島商工会議所会頭)。

中国地域エネルギーフォーラムの入居している広島商工会議所ビル4階の部屋からは、路面電車が走る道路をはさんで、眼前にあの原爆ドームを望むことができる。

同フォーラムのホームページからは、この原爆ドーム(=写真左)のライブ映像が見られるだけでなく、その映像を見たい方向や大きさを自在に変えることができる。

事務所立地のメリットを最大限に活かし、歴史的なモニュメントを全面的に押し出すのは、原子力と平和というアピールだけではなく、それに付随する大きな理由がある。ホームページにアクセスが多ければ多いほど、検索サービス会社の提供リストの上位に記載され、より全国レベルでの理解促進・宣伝効果を少しでも効果的に展開できるからだ。同ホームページのアクセスは、その他の地道な努力と合わせて2年余りで約22万件にまで達している。

同フォーラムは「暮らしの中のエネルギー問題〜〜みなさん、一緒に考えてみませんか」をキーワードに活動し、まずはエネルギーに少しでも関心を持ってもらうことに心をくだく。

同組織は1983年11月に「中国原子力産業懇談会」として設立され、91年7月から今日の名称に変更し、活動の幅をエネルギー全般にまで広げた。それに伴い、事務局も専従体制を採った。会員として中国地方5県の各商工会議所、特別会員として企業や経済団体などから構成され、事務所も広島商工会議所ビルに同居し、協力関係を築いている。

主な活動は、@エネルギー、環境問題などの一般対象のイベントA次世代層、子供などへの教育・理解促進活動B女性に的をしぼった催し物――の3本で、具体的には、エネルギー問題講演会の開催、発電所見学会の開催、エネルギー関係資料の作成・配布、学校・図書館へのエネルギー関係図書の寄贈、エネルギー情勢の海外調査団の派遣などを行っている。

次世代層への働きかけとしては、小・中学生向けのエネルギー教室などの開催、学校への出張授業などを行い、教育関係者にもエネルギー・環境問題についての資料・図書などの提供、学習教材の貸し出し、講演会・研修会・見学会の実施なども行っている。

一般広報についても、地方テレビでの6月の環境月間に合わせたテレビCM(30秒スポット・10本)、講演会・シンポジウムを行ってそれで終りというスタンスではなく、その素材内容を利用して地方紙に広告記事や企画特集記事を掲載するなどの工夫もしている。その内容は、「核兵器廃絶と原子力の平和利用を」、「環境と健康を科学する――放射線の利用と防御」などさまざまだ。その際、内容を読んでクイズに応募するコーナーを掲載し、さりげなくエネルギーや環境についての意見や感想を聞くことも忘れない。ただ個人情報の管理には気を使い、意見などのほかは、後日すべてを削除するという。

広島という土地柄、核兵器と原子力平和利用を並列に取り上げることには抵抗があるだろうと思いきや、広島だから堂々と主張できるというカラッとした明るささえ感じられた。

エネルギー・環境教育に関心のある教育関係者の組織化の手伝いも行っており、「中国地域エネルギー環境教育研究会」(会長=田中春彦・広島大学名誉教授)も立ち上げ、事務局を務めている。現在50人近くの教育関係者が参加し、研究会の開催、教員のためのエネルギー環境教育の副読本の発行支援なども行っている。

地方自治体や科学館、公民館などが行う市民講座、企画展などにも協力、時には共催の形をとりながら、講師派遣、実験キットの提供なども行ってきた。昨年9月に島根県松江市で行われた「環境フェスティバルin松江」では、エネルギー・環境コーナーで「エネルギー&環境クイズ大会」、「霧箱による放射線観察」などの催し物を行い、土曜・日曜2日間の全参加者1万人のうち、約3,000名の参加者を得た。

催し物への参加依頼がくるようになるのは、人的なつながりや地道な実績を積み上げることによって培ってきた信頼関係の賜物。催し物では「いかに資料を捨てられないようにするか」(後藤裕宣事務局長)、どれだけ工夫を凝らせるかがポイント。クイズに答えるとプレゼントがもらえたり、自分で作った模型(=写真右)は持ち帰られたりと、”遊び”の要素を取り入れている。子供たちに人気のある電動ミニカーのキットは、障害者授産施設などに依頼して作ってもらい、ささやかな社会貢献もしている。

人と人とのネットワーク、尽きることのない創意工夫――子供達の興味と関心をいかに引きつけるか、アイデアの勝負が続く。


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