[原子力産業新聞] 2007年3月29日 第2373号 <4面>

理研・RIBF ウランイオンの加速に成功 多段で世界初

理化学研究所は24日、RIビームファクトリー(RIBF)でウランイオンの加速に成功したと発表した。同イオンの加速は日本では初めて、リングサイクロトロン4基による多段加速では世界初となった。

ウランイオンは既存のイオン源から発生させ、同じく線形加速器と理研リングサイクロトロンで核子当たり11MeV(光速の15%)まで加速。さらに今回のRIBF計画で新たに建設した固定加速周波数型、中間段、超伝導の3基のリングサイクロトロンで、同345MeV(同70%)までの加速に成功した。

すでに昨年末に超伝導リングサイクロトロンからアルミニウムイオンでファーストビームを取出すことに成功し、今月に入ってクリプトンイオンによるRIビームの発生に成功していた。

ウランは天然に存在する元素で最も重いが、宇宙の歴史の中でどのように生成されたか分かっていない。このウランの合成には、およそ1,000種類の未発見の放射性同位元素が鍵を握るとされ、RIBF計画ではウランビームを加速してターゲットに照射、RIビームを生成し、こうした未知の新同位元素の発見を目指す。また、多種多様な元素を生成することで元素誕生の謎に迫る。

RIビームを生成する反応には、加速した原子核をターゲットに衝突させて複数の破砕片に崩壊する入射核破砕反応、およびウラン238がターゲット中の原子核をかすめると安定性を失い分裂する核分裂反応がある。重いウランイオンビームを用いると両反応が同時に起き、RIビームを効率良く生成できる。

このため米国、ドイツなどでウランビームを利用する次世代のRIビーム施設の建設計画が進んでおり、理研の成功は同施設の先鞭をつけたことになる。


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