[原子力産業新聞] 2007年4月5日 第2374号 <5面>

【座談会】国際産業再編のうねり ─ 日本の国家戦略 21世紀、世界の中核を担う原子力

「原子力国際化時代」本番 産業と市場の変革が劇的進展(続き)

司会 さて森本さん、原子力発電の事業当事者である電力業界にとり、今年はいよいよ再処理工場の操業開始が予定され、また、プルサーマルや高レベル放射性廃棄物最終処分場の問題等ホットな課題はあるものの、真の核燃料サイクル新時代を迎えている。電力業界として今年の位置づけに触れながら、今、話題の渦中にある国際産業再編についても言及ください。

〈燃料サイクル元年の正念場〉

森本 私ども電気事業者は、柳瀬課長の話にあったように、「世界の大きな流れに沿って策定された『原子力立国計画』を具体化する初年度」という位置づけで、全電気事業者挙げて原子力事業を推進していきたいと考えている。しかし、そのためには、何よりも不祥事とトラブルの連鎖を断ち切り、足元を固め直して安全・安定運転に徹することで、原子力発電所の地元はじめ、国民の皆さんの信頼を得ることをスタート・ポイントにしなければならないと痛感している。

その関連でもあるが、私ども関西電力の美浜3号機も2月7日に2年半ぶりに営業運転を再開させていただくことができたが、「このスタートは信頼回復のスタートである」と全従業員に意識喚起しており、まさに一日一日、愚直に安全運転を積み重ねる中からしか信頼回復はないとの決意で対処していきたい。

また、このほか当面の課題として、新耐震設計審査指針や新しい検査のあり方、高経年化対策など、国において数多くの施策を検討していただいている。これらについても適切に対応、対処し、まずは既設の原子力発電所の最大限の活用を図っていきたい。その上に立ち、燃料サイクル、プルサーマル計画や再処理計画を、国民の皆様の理解を得ながら、全力で推し進めていきたいと考える。とりわけ、今年は青森県六ヶ所村の再処理工場の竣工・操業、MOX燃料工場の着工など、燃料サイクルでは大きな一歩を踏み出す年という予定になっており、また、そうしなければならないと思っている。

さらに、もう1つの重要な課題は、高レベル放射性廃棄物の処分問題で、これも解決しないと、いわゆる“核燃料サイクルの輪”が完結しないだけに、具体的な動きが出てきたことについては、私どもは大変評価している。もちろん大変厳しい状況にあることは重々承知しているが、ぜひ処分場の立地が進むよう、国ともども、最終処分場の事業主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)の活動について支援、協力していきたい。

一方、齊藤さんから話のあった国際展開については、柳瀬課長からも指摘があったように、原子力事業というのは1つの国で完結することはあり得ないわけで、インターナショナルな事業だと受け止めている。また、世界的な原子力ルネサンスの流れの中でも、原子力の平和利用と核不拡散は一体のものとして議論されているし、今、齊藤さんが言われた原子力プラントメーカーの国際的アライアンス(協調)も、その象徴的なできごとだと思っている。

それだけに、私ども電力会社は原子力産業の国際再編・国際展開の意味、意義、重要性について全面的に理解しており、協力できることは協力させていただきたいと考えている。特に、経済発展の著しい近隣アジア諸国で原子力発電所の新規建設計画が目白押しだが、中国を含めアジア各国はベトナム、インドネシア、マレーシアはじめ、これまで石炭等の化石燃料依存率が極めて高いだけに、電力インフラの整備・拡充、エネルギーの安定供給、地球環境問題への貢献という意味から、アジア地域の原子力開発計画に対し日本の電力業界として果たすべき責務があると同時に、その中からわれわれの新たな役割も当然出てくるものと思っている。


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