[原子力産業新聞] 2007年4月12日 第2375号 <2面>

第40回原産年次大会 今井会長所信表明の概要 「地域を社会が支えることが重要」 地層処分

青森での大会開催にあたり、まず、日本の最重要施設である六ヶ所再処理工場など燃料サイクル施設を受け入れて頂き、その建設、運転に理解を頂いている青森県民に、心から御礼を申し上げたい。

私は、昨年6月に会長に就任して以来、日本各地の原子力施設や知事を訪問しており、その際、痛感したのは、日本のエネルギーの太宗となった原子力は、地域の方々の理解と協力によって支えられているということだ。

青森県においては、日本原燃をはじめとする事業者が何よりも安全確保を最優先して事業を進めているが、県民の皆さんに十分理解を頂けるよう願う次第である。

中国などの発展により、資源・エネルギーの需給が逼迫し、価格が高騰し、我が国にとっても資源・エネルギーの安定的な確保ということが、重要な問題となってきた。また、地球温暖化が進み、環境問題への対応が待ったなしの状態だ。こうした問題の切り札として原子力が世界的に見直されてきている。日本では、「原子力立国計画」が昨年発表され、政府による「ぶれ」のない原子力政策の推進を強く期待するとともに、私共民間産業界も一体となって進めたいと考えている。

日本の1次エネルギー自給率はわずか4%であり、原子力を準国産エネルギーとみて盛り込んだとしても16%に過ぎない。食糧の自給率が少ないと言われるが、それでも40%だ。

京都議定書の発効を受けて、我が国では、炭酸ガス排出量を減らすために、原子力発電所を2030年までに10基以上新設する計画だ。原子力の炭酸ガス排出量は、風力や太陽光よりも少ない。

原子力は、まさにエネルギー自給と地球環境の切り札。このような目で、原子力の意義をもう一度、考えてほしい。

昨年秋、国は電気事業者に対して、全ての発電設備について、過去に遡りデータ改ざんや必要な手続きの不備、その他同様な問題がないかの総点検を行うよう指示した。

その結果、今回の調査で明らかになった臨界問題については、同様な事態が今後も続くようでは、原子力発電の安全性に対して国民の信頼を得ることはできない。技術的問題については、しっかりと調査し、確実な防止方策を取ってもらいたい。適切な方策が講じられれば、基本的には原子力発電の安全性が揺らぐものではないと考える。

当協会は、昨年10月に「原子力産業安全憲章」なるものを制定して、原子力産業に携わる者一人ひとりの行動指針としました。私はこれを携えて全国の原子力施設立地県を訪ねて対話・広報に努めているところだ。

施設を安全に管理・運転するには、まず現場で働く人達に過度の負担をかけず、使命感をもって自主保安活動に専念できるようにすることが重要である。

わが国では、2030年頃になると、既存の原子力発電所のリプレース時期を迎え、大量の発注が予想される。一方、海外でも、米国、ロシア、中国、インドでは20年頃までにそれぞれ20基前後の原子力発電所の建設を計画している。

今から日本のメーカーと電力が一体となって取組んで、国内建設だけでなく、輸出にも強い体制基盤を確立し、世界の厳しい競争社会の中で、勝ち抜くことのできる体制になってもらいたい。国は、我が国の原子力産業界が世界と競合しながら国際展開を進めるためにも、国の規格・基準を国際規格・基準に合わせるよう取組んでほしい。

高レベル廃棄物の処分事業は、国家のエネルギー政策に影響を与える重要事業であること、またその事業の長期性を考えると、処分場を誘致した地域だけが、この問題を背負うにはあまりにも荷が重過ぎる。このため、国および電力をはじめとする関係機関は、国民各層の間で広範な議論をさらに行い、地層処分の必要性や安全性についての理解を深め、事業を受け入れる、そして受け入れた地域を社会が支える環境を広く醸成させていくことが必要である。

最後に、今回の年次大会の関係者の皆さんに感謝の意を表したい。


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