[原子力産業新聞] 2007年4月19日 第2376号 <6面>

第40回原産年次大会 【視点】原子力発電所新設ラッシュへ向けた「競争と協調」の構図

規制の国際化≠歓迎
D.ウォーラーIAEA事務局次長に聞く

――原子力産業の国際的再編と市場の国際化が急進展しているが、IAEAの原子力平和利用推進活動にどのような影響があるか。

ウォーラー その点については、われわれも強い関心を持ち、多くの議論を重ねている。これまでも、IAEAの活動で原子力発電所の数は世界全体で増えてきたが、今後、国際的な許認可が可能になれば、普及は一段と大規模なものとなろう。同時に、原子力関連施設、核関連物質が増えれば、IAEAの保障措置の責任も重くなる。

今までは、日本も含め個々の国ごとの許認可に非常に多くの時間を費やしてきた。しかし、国際的な設計・許認可のアプローチは、一連のプロジェクトに要する時間を大幅に節約することになると期待される。また、原子力発電の安全性も世界的に高まることになろうという意味で、IAEAとしては規制の国際化≠歓迎したい。

――最近、ロシアが原子力を国家エネルギー戦略の中核に据え、「核燃料サイクル国際センター構想」を提案するなど、積極的言動が顕著だがどう見るか。

ウォーラー ロシアの核燃国際センター構想は、これから原子力発電を導入する国への核燃料供給保証構想の1つで、よくまとまっていると思う。ただ昨年、6か国提案はじめ、日本も独自の提案を出しており、6月の理事会に向けIAEA事務局でポジションペーパーを準備中である。どれか1つの案が採択されるというより、理事会の場で活発な意見交換が行われ、いろいろな意見組み合わせ・統合で良い構想にしたい。

――核燃料供給保証もその1つだが、核不拡散のための新しい国際的枠組みとして、より広い核の多国間管理(MNA)が長年の課題となっている。原子力が実ビジネスとつながるようになるにつれ、各国・グループでさまざまな思惑も交錯するように思うが、IAEAの見通しを聞きたい。

ウォーラー MNAは、世界で原子力発電が拡大する中で、核燃料サイクルの機微な部分の扱いを考える必要があるとの認識からスタートした。特に、核拡散への懸念が高まっている今、真剣に考えるべき時に来ていると思う。IAEAが確保したいのは、現行市場の崩壊を促すようなインパクトを最小限にとどめることにある。いくつかの提案が出されているが、核不拡散を厳守するだけでなく、新技術開発の促進にもつながるよう配慮していきたい。

MNAはまだ、極めて初期構想の段階で、将来像を描くには時期尚早である。枠組みの決定は加盟国の総意次第で、IAEAが決定することではない。IAEAは、議論を進めるための素材を提供することにあり、グローバル企業に役立つような情報も提供したい。

(原子力ジャーナリスト 中 英昌)


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